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セミナーは夏休み中です。次回は、10月から開始します。

これまでの発表

2017年度

発表者名: 松崎 太郎

発表内容: 論文紹介及び卒業研究の紹介

タイトル: Paradox of peroxy defects and positive holes in rocks. Part I: Effect of temperature (Freund F. T. and Freund M. M., Journal of Asian Earth Sciences, 114, 373-383, (2015))

概  要:

 1995年以降の磁気嵐時期以外に起きたM8を超える11の地震全てにおいて地震発生の約40〜50分前に電離層における正のTEC(総電子数)異常が見られていたことが報告されている。太陽活動の影響などにより、TEC異常は地震がなくても時々見られるが、11のケース全てでこれが起こることは偶然とは考えにくく、直後の大地震との相関が高いことが考えられる。また、M9.2であったスマトラ・アンダマン地震では 例外的ではあるがTEC異常が約90分前に起こっており、先行時間と地震の規模にも関連がある可能性も考えることもできる。(Heki 2014) これらの観測事実から、およそ50分以内に電離層に影響を与えうる現象が考えられ、震央付近の地球岩石圏の分極が影響を与えていることが予想される。

 分極メカニズムとして提唱されている仮説は、石英が関与する圧電分極補償電荷説 (Ikeya 1997)、水が関与する流動電位説 (Mizutani 1976)、ケイ酸塩中に存在する過酸化架橋構造の正孔励起に伴った正孔の移動説 (Friedemann 2006) などがあり、私は過酸化架橋構造の正孔励起に伴った正孔の移動説に興味を持ち、卒業研究のテーマとして扱うことにした。卒業研究では圧力印加時の正孔励起をESR (Electron Spin Resonance) を用いて測定することを予定しており、自然の岩石を用いると岩石中のFeの存在が ESR測定の上で問題となるため、合成されたMgO単結晶の過酸化架橋構造を用いた研究を行う。

 今回は過酸化架橋に関する先行研究、Paradox of peroxy defects and positive holes in rocks (Friedemann T, Minoru M) の概要紹介と共に今後の予定について報告する。

発表者名: 渡邊 宏海

タイトル: ルナ16号サンプルとU-Pb法

概  要:

 月の進化を議論するうえで、月隕石やアポロ計画、ルナ計画によるサンプルは重要な試料である。中でもルナ16号は月面のサンプルリターンに成功した最初の無人探査機である。

 豊かの海に着陸したルナ16号の採取したドリルコアサンプルは月面から深くなるほど粒が粗く、その大部分を玄武岩質の粒が占めている。 結晶化年代及び変成年代の2つの年代情報と、サンプルのマグマソース起源に関する情報のμ値を得ることのできるU-Pb法をサンプル中のリン酸塩鉱物に用いることで月面の火成史・衝突史を明らかにしたいと思う。

 今回の発表ではルナ16号サンプルの特徴をまとめ、U-Pb年代測定法の原理を紹介する。

発表者名: 村山 純平

発表内容: 論文紹介

タイトル: Near infrared cavity ring-down spectroscopy for isotopic analyses of CH4 on future Martian surface missions ( Y. Chen, P. Mahaffy, V. Holmes, J. Burris, P. Morey, K. K. Lehmann, B. Sherwood Lollar, G. Lacrampe-Couloume, T. C. Onstott, Planetary and Space Science, 105, 117-122, (2015) )

概  要:

 近年、火星大気中には微量ながら数十ppbv程度のメタンが含まれることが、天文台や惑星探査機の赤外分光から明らかになっている。そしてその濃度分布は場所と季節に大きく依存し、継続的かつ急速なメタン供給源の存在を示唆している。メタン源の候補には生物・非生物由来含め様々挙げられているが、中でも注目されるのがメタン菌の存在である。火星に送り込まている種々の探査機は火星生命が存在するか否かという問題に未だ挑戦している途上ではあるが、火星大気中のメタンを直接、より精密に分析することにより、火星における生命探査はより定量的なものとなるだろう。

 本論文は、惑星探査機による火星大気中メタンの炭素同位体比の測定を視野に入れ、小型化、高感度化が可能な吸収分光装置としてcavity ring-down spectroscopy (CRDS) の開発を行ったものである。CRDSとは、測定気体の入った共振器内でレーザー光を共振させ、漏れ出た光を検出することで減衰の時定数を求める手法である。共振器に高反射率のミラーを用いる事により数十cm程の小型の装置で数km以上の光路長を稼ぐことができ、半導体レーザーを用いるので省電力である。さらに、測定の特性上レーザー強度の擾乱の影響を受けないという利点がある。

 しかし、CRDSではレーザー光の共振条件を満たすために高度なアラインメントが必要であり、温度やキャビティ内の圧力などの僅かな変化の影響を受けやすいという課題もある。本論文では、実験室環境において微量メタンの測定を行い、使用するレーザー波長の選別、ベースライン測定の工夫、測定時間及び測定回数の最適化等によって、メタンの検出限界は100Torrで ~7pptv、δ13Cの誤差は大気中1.9ppmvのメタンに対して1σ < 2‰ を実現したと主張している。

発表者名: 山口 若奈

タイトル: 磁気並進運動による2成分粒子の磁化率測定

概  要:

 我々の身の回りにある多くの物質は、各々固有の反磁性磁化率を有している。先行研究では、小型の永久磁石を用いて磁気並進運動を観測することにより、磁化率ごとに単一物質を分離・識別できることが示されている。外惑星の衛星表面は揮発性の固体粒子及び岩石の粒子に覆われており、この存在比を簡単に識別する新たな手段として、物質固有の磁化率を利用できないかと考えた。今回、その可能性を探るために、外惑星の衛星表面の主要物質であるドライアイス粒子(昇華点195K)と黒鉛の2成分粒子の磁化率について磁気並進運動から測定できることを検証する。その進捗状況と今後の予定について報告する。

発表者名: 藤本 駿

タイトル: イメージング質量分析の開発

概  要:

 太陽系の進化過程を明らかにする上で、2次イオン質量分析計(SIMS: Secondary Ion Mass Spectrometer)を用いた局所同位体分析は欠かすことのできない分析手法である。SIMSは微小領域の分析手法として広く用いられているが、イオン化効率が低く、スパッタされた試料のうち大部分が中性粒子であるため、試料のロスに対して感度が低いという問題が存在する。このような問題を解決するため、我々のグループでは、スパッタされた中性粒子をフェムト秒レーザーでポストイオン化する2次中性粒子質量分析計(SNMS: Secondary Neutral Mass Spectrometer)の開発を行っている。

 現在の分析では、任意の位置にイオンビームを照射し、レーザーによるイオン化、質量分析計への引き込み、質量分離、イオン信号の検出という一連の操作を繰り返し、ある一点における質量スペクトルを取得している。均質な物質を測定する場合、この分析方法で十分であったが、同位体的に不均一な物質を測る場合、点ではなく面による分析が非常に有効であると考えられる。そのため、イオンビームを走査し、一つ一つの座標におけるスペクトルを取得する、質量イメージングシステムの構築を念頭に置いている。今回のセミナーでは、システムの構築にあたり、時間精度や電圧の制御範囲など、必要とされるスペックについて調べたのでその結果を発表する。

発表者名: 前薗 大聖

タイトル: 火成岩の一軸圧縮で発生する電流の性質

概  要:

 地震に先行する電磁気的現象として、電離層における電子密度(TEC)の異常が報告されている(Heki,2011)。この原因として、震央付近の地殻に表れるマクロな電気分極が考えられ、その分極メカニズムは、石英が関与する圧電補償電荷説、過酸化架橋の正孔励起説、間隙水の移動による流動電位説などが提唱されている。正孔励起説(Freund,2006)は、火成岩の圧縮によって、鉱物中の酸素過剰欠陥部分に正孔が励起し、濃度拡散で移動する説であり、継続時間の長い電磁気異常や地電位差異常を説明できる点で注目されている。この正孔濃度は、温度を上げると増えることが予想される。

 昨年度の実験では、3×6×10cmの斑レイ岩を120℃まで加熱し、約5MPaを加え、岩石両端間の電流を測定することで正孔励起による電流を調べた。結果として、圧縮中に流れる電流は、常温のとき数pAだったが120℃では50pAと、10倍程度増える傾向が見られた。

 今回のセミナーでは、前回の発表からの進捗状況、特に圧力誘起電流の圧力依存性についての実験結果と今後の課題を報告する。

発表者名: 松田 貴博

タイトル: 局所U-Pb年代分析に向けたレーザーポストイオン化SNMSの開発

概  要:

 太陽系の形成過程を明らかにする上で、Uの放射壊変系を利用した局所U-Pb絶対年代分析は重要である。そのためには、天然鉱物に含まれる極微量のUとPbの同位体比を高精度に測定する必要がある。これまで微小領域における同位体を分析する手法として、2次イオン質量分析計(SIMS: Secondary Ion Mass Spectrometer)が広く使用されてきた。しかし、SIMSは、2次イオン化効率が数%以下と非常に低く、スパッタされた試料のうち大部分が中性粒子であるため、試料のロスに対して感度が低いという問題が存在する。そのため、極微小なサンプルに含まれる微量元素の同位体比を高精度で分析することが困難であった。このようなSIMSの問題を解決するために、現在我々のグループでは、スパッタされた中性粒子をフェムト秒レーザーでポストイオン化する2次中性粒子質量分析計(SNMS: Secondary Neutral Mass Spectrometer)の開発を行っている。

 本装置が局所U-Pb年代分析に適用できるか確認するため、U濃度が約2wt.%と高いHigh Uranium Zircon(年代:約500Ma)と、ジルコンのU-Pb年代分析において標準試料として用いられる91500ジルコン(年代:1065Ma, U濃度100ppmの)について、本装置で測定を行った。Pb-Pb年代分析から、High Uranium Zirconは比較的文献値と近い年代が求められたが、91500ジルコンは文献値の年代と大幅にずれる結果となった。その原因として、導電性を確保するためにサンプルに施した金コーティングに含まれるPbが、91500ジルコンに混入し、Pbの同位体比に影響を及ぼしている可能性が挙げられる。今回は新たに91500ジルコンのサンプルを作成し、本装置で測定した。今回のセミナーではその結果を発表する。

発表者名: 新述 隆太

タイトル: 月極域における水分子の同位体分析装置の開発

概  要:

 近年リモートセンシングによる観測によって月面に水の存在が示唆されている。リモートセンシングによって分かることは、結果はさまざまであるが、水の存在量のみであり水の詳細情報までは調査が及ばない。そこで水分子がどこから来たのか、どのように表土中にトラップしているかなどを知るためにはその場観測が必要不可欠である。

 今回は前回からの実験の進捗状況と今後の予定を発表し、また2.73μmの赤外レーザーを用いたHとOの同位体の研究について纏めた論文を紹介する。

発表者名: 椎野 朱里

タイトル: 火星表層模擬試料のレーザー誘起蛍光分光分析

概  要:

 1960年代から始まったNASAによる数々の火星探査により、火星に生命が存在した(存在する)可能性を示す地形学的・物質化学的証拠が増えてきている。例えば、マーズ・グローバル・サーベイヤーが発見した、液体の水によって形成された氷河の地形(V. R. Baker, 2001)、オデッセイが極域に検出した氷由来の水素 (W. V. Boynton et al. 2002), マーズ・サイエンス・ラボラトリーによって火星表層から検出されたメタン、塩素化炭化水素(Freissinet et al. 2015)、マーズ・ルコネッサンス搭載機器の観測データから流水の痕跡(Ojha et al. 2015)などである。

 火星の広域的な地質探査にLIFSが有効であると考えた。そこで昨年の卒業研究では、火星表層模擬試料のLIFSスペクトルの特徴を理解することを目的とした。含水ケイ酸塩や水和塩を含む15種類の試料のLIFSスペクトルと蛍光強度変化のデータを取得した。昨年度での実験では、硫酸カルシウム二水和物について長時間レーザーを当て続けて蛍光スペクトルが変化するか、分光器のスリット幅で蛍光が変化するか条件を変えて測定を行ったり、488nmの励起波長で蛍光が得られるかを硫酸カルシウム、ゼオライトを用いて蛍光の区別ができるかどうかを確認することを行った。今回、修論に向けての方針が固まったので、それを報告したい。今後行う実験は、蛍光光度計を用いて火星表層温度まで冷やした模擬鉱物試料の蛍光を測定し、地球上での常温の蛍光の変化の有無と、蛍光を発しない酸化鉄に微量の水和塩や有機物を混合し、蛍光を測定する予定である。

発表者名: 諸本 成海

タイトル: ルナ24号サンプルのU-Pb年代分析に向けた研究報告

概  要:

 1976年に打ち上げられ月の危難の海に着陸したルナ24号探査機は、月表面から深さ2mあまりのレゴリスサンプルを採取し地球に帰還した。様々な深さのサンプルから組成や年代を調べる研究が行われてきたが、深さ130cm付近のサンプルについては年代の報告例がない状態となっている。またアポロ・ルナ計画で採取された月のサンプルに関し年代とTi濃度の相関関係が示唆されてきたが、近年の研究からはこれを否定する結果が報告されている。そこで本研究では、この深さ130cmでのルナサンプルの年代とTi濃度の両方を決定し、両者の相関関係の有無を調べることを目的とした実験を行う。年代はサンプルに含まれるリン酸塩鉱物のU-Pb分析から、Ti濃度は種々の金属元素の比から母岩のTi濃度を推定する経験則から決定する。今回の発表では、これらの分析に向けてこれまで行ってきた各種実験の結果や今後の課題を報告する。

発表者名: 田坂 直也

タイトル: 月極域における水同位体その場観測装置の開発

概  要:

 月面には常時外部供給源から揮発性物質が供給されている。近年リモートセンシング技術の発達などにより月極域には一定量の水が存在することが示唆されている。しかしその推定量はユニークなものではないため、存在量をはっきりさせるためには月極域でのその場観測が必須となる。さらに月面の水分子同位体を測定することで、起源の違いを知ることができる。そこで私は水分子の濃度測定、同位体測定が出来る装置のプロトタイプの開発、測定を行っている。今回、私は測定に最適な波長域を調査し、各吸収線の温度変動の影響を調べたので、そのことについて発表する。

発表者名: 久好 圭治

タイトル: 磁場勾配による並進運動を用いた全固体粒子の分離と非破壊同定

概  要:

 一般に、微小重力空間に開放された固体粒子は,磁気的ポテンシャルによる並進運動を引き起こすが,その速度は粒子の質量に依存せず,物質固有の磁化率のみに依存する.このため得られた磁化率を文献値と対応することで,単一粒子で物質同定ができる.この原理により,磁化率の異なる複数の反磁性粒子と常磁性粒子の集団に関して,その分離,回収および同定を実現した.これまで磁場による粒子の分離・抽出は,自発磁化を有する一部の物質に限られていたが,固体全体にこれが拡張できる展望が得られた.有機化学の分野では,精密分析に先立って有機分子の混合物を分子量ごとに分離する方法が,クロマトグラフィ技術として確立している.無機物質においてもこれと同様の技術が望まれるが,この磁気運動を取り入れることで,原理的には全ての固体物質でそれが実現できる.異種粒子の混合試料分析の前処理過程としての展望について発表する.

最後の小柴昌俊教育科学賞 … 第13回小柴昌俊教育科学賞最終選考会の報告

発表者名: 宮 晃平

タイトル: 進捗報告: MULTUM-SNMS測定条件と標準試料の検証

概  要:

 我々のグループでは現在、プレソーラーSiC粒子の同位体組成から起源天体の物理環境を決定するという目標の元、新たに開発した質量分析計MULTUM-SNMSを用いて研究を進めている。

 前回のセミナー発表では、SEM-EDSを用いた元素分析及びSNMSを用いたSi同位体分析から、Murchison隕石の酸残渣中からおよそ100粒のプレソーラーSiC粒子を検出したこと、あるいはそれらのほとんどがMainstream起源の粒子である事を報告した。また、SiC粒子中の微量元素(~400ppm)であるTi同位体分析から、本装置の微量元素同位体分析への応用の可能性を示唆した。しかし、得られたマススペクトルのピークの形状に乱れが見られたことから、測定条件の検証の必要性もまた示唆された。

 今回の発表では、この課題に対し、Ti同位体分析の条件の見直しとサンプルの粒子効果を考慮した上で行った検証実験について、その結果を報告する。

 またSi同位体分析についても、ここまでの分析から得られた同位体組成(約100粒分)は、傾向としては先行研究のデータと整合的であったが、全体としての組成が、標準物質として用いた研磨剤SiCの組成に対し軽い同位体組成を示す事が分かっていた。この点について、研磨剤SiCのSi同位体組成が標準物質として適当であるかどうかを確認する為、Mineral Mount(MINM25-53 #02-043)中のSiを含む複数の鉱物について、Siの同位体分析を行った。この結果についても報告する。

 最後に、プレソーラーSiC粒子のTi同位体分析についての最新の論文"Titanium isotopic compositions of rare presolar SiC grain types from the Murchison meteorite" (Ann N. Nguyen 2017, GCA)を紹介し、プレソーラーSiC粒子のTi同位体組成が宇宙地球科学の分野にもたらす知見について説明する。

発表者名: 新述 隆太

タイトル: 月極域における水分子の同位体分析装置の開発

概  要:

 近年リモートセンシングによる観測によって月面に水の存在が示唆されている。リモートセンシングによって分かることは、結果はさまざまであるが、水の存在量のみであり水の詳細情報までは調査が及ばない。そこで水分子がどこから来たのか、どのように表土中にトラップしているかなどを知るためにはその場観測が必要不可欠である。

 今回は表土を採取し水分を抽出する手法と採取した水の同位体組成を分析するレーザー装置の紹介をし、実験の進捗状況と今後の予定について発表する。

発表者名: 前薗 大聖

タイトル: 火成岩の一軸圧縮で発生する電流の温度依存性

概  要:

 地震に先行する電磁気的現象として、電離層における電子密度(TEC)の異常が報告されている(Heki,2011)。この原因として、震央付近の地殻に表れるマクロな電気分極が考えられ、その分極メカニズムは、石英が関与する圧電補償電荷説、過酸化架橋の正孔励起説、間隙水の移動による流動電位説などが提唱されている。正孔励起説(Freund,2006)は、火成岩の圧縮によって、鉱物中の酸素過剰欠陥部分に正孔が励起し、濃度拡散で移動する説であり、継続時間の長い電磁気異常や地電位差異常を説明できる点で注目されている。この正孔濃度は、温度を上げると増えることが予想される。

 卒業研究では、火成岩を一軸圧縮したときに発生する電流、特に正孔励起による電流の温度依存性を調べた。3×6×10cmの斑レイ岩を120℃まで加熱し、約5MPaを加え、岩石両端間の電流を測定した。結果として、圧縮中に流れる電流は、常温のとき数pAだったが120℃では50pAと、10倍程度増える傾向が見られた。

 今回のセミナーでは、研究の背景について説明した後、卒業研究、今後の展望について発表する。

発表者名: 松田 貴博

タイトル: 局所U-Pb年代分析に向けたレーザーポストイオン化SNMSの開発

概  要:

 太陽系の形成過程を明らかにする上で、Uの放射壊変系を利用した局所U-Pb絶対年代分析は重要である。そのためには、天然鉱物に含まれる極微量のUとPbの同位体比を高精度に測定する必要がある。これまで微小領域における同位体を分析する手法として、2次イオン質量分析計(SIMS: Secondary Ion Mass Spectrometer)が広く使用されてきた。しかし、SIMSは、2次イオン化効率が数%以下と非常に低く、スパッタされた試料のうち大部分が中性粒子であるため、試料のロスに対して感度が低いという問題が存在する。そのため、極微小なサンプルに含まれる微量元素の同位体比を高精度で分析することが困難であった。このようなSIMSの問題を解決するために、現在我々のグループでは、スパッタされた中性粒子をフェムト秒レーザーでポストイオン化する2次中性粒子質量分析計(SNMS: Secondary Neutral Mass Spectrometer)の開発を行っている。

 本装置が局所U-Pb年代分析に適用できるか確認するため、U濃度が約2wt.%と高いHigh Uranium Zircon(年代:約500Ma)と、ジルコンのU-Pb年代分析において標準試料として用いられる91500ジルコン(年代:1065Ma, U濃度100ppmの)について、本装置で測定を行った。Pb-Pb年代分析から、High Uranium Zirconは比較的文献値と近い年代が求められたが、91500ジルコンは文献値の年代と大幅にずれる結果となった。その原因として、導電性を確保するためにサンプルに施した金コーティングに含まれるPbが、91500ジルコンに混入し、Pbの同位体比に影響を及ぼしている可能性が挙げられる。その検証として、1次イオンビームの照射電流量や加速電圧を変えながら金コーティングを剥がし、金のカウント数やPbの同位体比の変化を調べた。今回の発表ではその結果を報告する。

発表者名: 諸本 成海

タイトル: 月隕石NWA2977のU-Pbシステマティックス

概  要:

 月の進化について議論をするうえで、月隕石やアポロ計画・ルナ計画によるサンプルは重要な研究対象の一つである。

 卒業研究では、2005年に発見された斑れい岩質月隕石NWA2977について、2次イオン質量分析計NanoSIMSによるU-Pb局所同位体分析を行った。このサンプルには、天体衝突等のイベントでできたと思われるショックメルトベインが存在することや、UやThなどを含む不適合元素に比較的富んでいるといった特徴がある。結晶化年代及び変成年代の2つの年代情報と、サンプルのマグマソース起源に関する情報のμ値(238U/204Pb)を得ることのできるU-Pb法を用いることで、NWA2977の火成史・衝突史を明らかにしようと試みた。

 リン酸塩鉱物の分析から、サンプルが約31億年前に結晶化したこと、極めて最近にショックイベントを経験した可能性があること、また不適合元素に富むサンプルとしては低いμ値をもつことが明らかとなった。

 今回の発表では、U-Pb法や測定の原理を紹介するとともに、得られた結果に関する考察を行う。

発表者名: 椎野 朱里

タイトル: 火星表層模擬試料のレーザー誘起蛍光分光分析

概  要:

 1960年代から始まったNASAによる数々の火星探査により、火星に生命が存在した(存在する)可能性を示す地形学的・物質化学的証拠が増えてきている。例えば、マーズ・グローバル・サーベイヤーが発見した、液体の水によって形成された氷河の地形(V.R.Baker, 2001)、オデッセイが極域に検出した氷由来の水素(W.V.Boynton et al. 2002), マーズ・サイエンス・ラボラトリーによって火星表層から検出されたメタン、塩素化炭化水素(Freissinet et al. 2015)、マーズ・ルコネッサンス搭載機器の観測データから流水の痕跡(Ojha et al. 2015)などである。

 将来の日本の火星探査計画では、生体細胞を直接検出するために生体物質に反応する蛍光色素を用いた小型蛍光顕微鏡を搭載する計画があるが(山岸,2011; 2012)、本装置にレーザー誘起蛍光分光(Laser Induced Fluorescence Spectroscopy,LIFS)法を備え付ければ、細胞に限られない高空間分解能惑星物質調査が可能になる。そこで昨年の卒業研究では、火星表層模擬試料のLIFSスペクトルの特徴を理解することを目的とした。含水ケイ酸塩や水和塩を含む15種類の試料のLIFSスペクトルと蛍光強度変化のデータを取得した。昨年度での実験では、硫酸カルシウム二水和物について長時間レーザーを当て続けて蛍光スペクトルが変化するか、分光器のスリット幅で蛍光が変化するか条件を変えて測定を行ったり、488nmの励起波長で蛍光が得られるかを硫酸カルシウム、ゼオライトを用いて蛍光の区別ができるかどうかを確認することを行った。今回、鉱物と有機物を混合した場合の蛍光の比較についての論文(Heather D Smith et al, 2014)を紹介することを通して、今後の有機物と各種鉱物を混合して行う実験で得られるであろうスペクトルについて予測を行った。

発表者名: 田坂 直也

タイトル: 月極域における水同位体その場観測装置の開発

概  要:

 月面には常時外部供給源から揮発性物質が供給されている。近年リモートセンシング技術の発達などにより月極域には一定量の水が存在することが示唆されている。しかしその推定量はユニークなものではないため、存在量をはっきりさせるためには月極域でのその場観測が必須となる。さらに月面の水分子同位体を測定することで、起源の違いを知ることができる。そこで私は水分子の濃度測定、同位体測定が出来る装置のプロトタイプの開発、測定を行っている。今回の発表ではまず研究概要を説明し、進捗状況について発表する。

発表者名: 藤本 駿

タイトル: マイクロフォーカスX線ビームラインの構築

概  要:

 我々の研究室では、次世代の人工衛星搭載を念頭に開発しているSOIPIX素子の信号生成過程を詳細に調べるために、マルチコリメータ実験を計画している。マルチコリメータ実験とは、数の穴の空いたフィルターを検出素子にかぶせ、X線の入射位置をμmオーダーで特定できる実験手法である。その準備段階として、擬似平行X線ビームラインを構築する必要がある。本研究では、ビームラインの最重要部であるX線発生装置について装置の立ち上げ、強度、スペクトル性能の検証を行った。

 今回使用するX線発生装置はOxford 社製のマイクロフォーカスX線管で、スポットサイズは7μm、ターゲットはタングステン(W)を使用している。管電圧は50kVの電圧までかけることができ、管電流は1mA まで流すことが出来る。ただし、管電圧と管電流は汎用5V直流安定化電源を別途用意し、0.5Vの制御電圧で管電圧の0から50kV、管電流の0から1mA を制御している。

 Amptek社製のSDD(Silicon Drift Detecter)123を用いてマイクロフォーカスX線管からのスペクトル測定を行った。立体角を狭め、SDDに入射する光子数を少なくするために金箔に直径1mmの穴を開け、SDDの直前に取り付けた。放射線遮蔽用のステンレスチェンバーを介したためSDDからX線管までの距離は300mmとなった。データ取得時間は60sで、管電圧を変えながらスペクトルを取得した。スペクトルには、制動放射による連続成分に加え、Wの輝線(Lα=8.36keV, Lβ=9.72keV, Lγ=11.28keV) が得られた。また、ステンレスチェンバー起因のCrの輝線(Kα=5.41keV)とFeの輝線(Kα=6.36keV, Kβ=7.02keV)、も見えた。

発表者名: 河井 洋輔

タイトル: 探査機搭載用「その場」質量分析システムの開発 ~小型MULTUMによるガス分析の現状~

概  要:

 現在、JAXAでは戦略的中型宇宙科学ミッション候補として「ソーラー電力セイル探査機による外惑星領域探査」プロジェクトが進められている。雪線(3AU)以遠かつ長期安定軌道にあり、原始太陽系の情報を保持していると考えられる木星トロヤ群の超始原的な天体を目指し、質量分析システムを用いて「その場」での水・有機物の分子種同定および同位体分析を行うことを計画している。

 オンサイトでの質量分析には、装置が小型であることだけではなく、夾雑物を取り除くための十分な前処理を必要としない高い質量分解能が求められる。大阪大学質量分析グループによって開発された多重周回飛行時間型質量分析計”MULTUM”は、小型でありながら同一軌道上を多重周回させ飛行距離を伸ばすことで高い質量分解能を実現できる。この特徴を活かし、現在我々はMULTUMをベースとした探査機搭載用の質量分析システムの開発を行っている。

 本発表ではオンサイト分析の予察的な実験として、小型MULTUMの市販機を用い大気中に含まれる様々な分子種の同位体分析を行ったので、その結果を報告する。

発表者名: 宮 晃平

タイトル: MULTUM-SNMSを用いたMurchison SiCの同位体分析

概  要:

 Murchison隕石をはじめとする始原的隕石には、ごく微量ながら(~1ppm)太陽系形成時の高温過程を免れた微小粒子が存在する。高温による同位体的均質化を免れたこれら粒子は、その同位体組成が太陽系前駆天体の情報を保持している事からプレソーラー粒子(presolar grain)と呼ばれ、質量分析により太陽系(標準)物質に対する同位体比異常として検出される。またプレソーラー粒子の同位体組成から得られる情報として、例えばプレソーラー粒子の典型であるシリコンカーバイド(SiC)に着目すると、その主要構成元素であるSiとCからは太陽系前駆天体の天体種(AGB星やSupernovaなど)を同定することができ、また重元素をはじめとするその他の微量含有元素(Ti, Sr, Zrなど)の同位体組成は、その前駆天体の物理環境を反映していることが知られている。

 この背景のもと、現在我々はMurchison隕石中から分離したSiC粒子の同位体分析を行っている。また分析にはMULTUM-SNMS(レーザーポストイオン化2次質量分析計)を用いており、最適化に向けた検証実験も並行して行っている。

 発表では、まずこれら研究概要について紹介し、続いて微量含有元素であるTiの同位体分析の現状について報告する。

発表者名: 寺田 健太郎

タイトル: 月衛星周回衛星「かぐや」による地球起源の酸素の観測

概  要:

 アポロ計画で採取された月表土の酸素同位体は非常にユニークで、月本来の酸素同位体組成を示す成分以外に、16O-rich成分と16O-poor成分の2つの成分の存在が指摘されていました。この16O-rich成分は太陽風起源であることが2011年のNASAのGENESISミッションによって報告されましたが、16O-poorの起源についてはよくわかっていませんでした。一方、地球のオゾン層の酸素同位体比は16O-poorであることが知られています。 そこで我々は、地球の酸素が月に到達しているという仮説を検証すべく、月周回衛星「かぐや」のデータを再解析しました。その結果、太陽風によって引き伸ばされた地球磁気圏尾部のプラズマシートを「月」が横切る際に、酸素イオン(O+)のフラックスが有意に増加することを発見しました。その詳細について報告します。

2016年度

発表者名: 赤井 真道

タイトル: アルゼンチンNeuquén盆地K/Pg境界堆積岩中の生物起源指標分子の分布と大量絶滅事変のグローバル・ローカルな影響

概  要:

 約6600万年前の生物大量絶滅は、隕石衝突により引き起こされたことを支持するイリジウム濃集(e.g., Alvarez et al. 1980)をはじめ、世界各地の白亜紀/第三紀(K/Pg)境界粘土層中の地球化学・古生物学的記録に証拠づけられる。しかし、隕石衝突がどのような規模でどのような地球環境変動を与えたかについては未解明である。そこで本研究では、北半球に比べ研究の少ない南半球のアルゼンチンK/Pg境界堆積岩の有機地球化学的研究を行い、その特色を他地域と比較し、大量絶滅事変のグローバル及びローカルな影響を明らかにした。

 アルゼンチンNeuquén盆地Bajada del Jagüel地域のK/Pg境界層とその上下層で採取された15種の堆積岩粉末を試料に用いた。各試料の全有機炭素量(TOC)、全硫黄量(TS)をCHNS元素分析計で測定した。また、各試料をジクロロメタン/メタノール(9:1)混合溶媒で超音波抽出し、シリカゲルカラムで分画後、濃縮しガスクロマトグラフ質量分析計で測定した。

 TOCは白亜紀層から境界層にかけて減少し、第三紀層で再び元の割合まで回復したことから、大量絶滅に伴う生命活動の変動を反映していると考えられる。分子個別には、海棲プランクトン由来の短鎖n-アルカン(C15-C19)、プリスタン(Pr)、ファイタン(Ph)は白亜紀層から境界層で減少したのに対し、陸上植物由来の長鎖n-アルカン(C27-C31)、レテン、デヒドロアビエチン酸、ピレンなどは境界層で増加するという2つのパターンが見られた。また、境界層でTSの異常濃集が見られ、酸化還元環境指標であるPr/Ph比が上下層に比べて境界層で非常に小さいことから、絶滅事変時に海洋が還元的になり硫酸還元バクテリアの活動が活発になったと考えられる。K/Pg境界層での硫化物の異常濃集はアメリカ(Maruoka et al.,2002)やスペイン(Kaiho et al.,1999)でも報告されていることから、海洋還元化は地球規模だったことが示唆され、その要因となったのは、陸上植物にも打撃を与えた酸性雨である可能性が高い。

発表者名: 椎野 朱里

タイトル: 月面のレゴリスサンプリング法の開発

概  要:

 1960年代から始まったNASAによる数々の火星探査により、火星に生命が存在した(存在する)可能性を示す地形学的・物質化学的証拠が増えてきている。例えば、マーズ・グローバル・サーベイヤーが発見した、液体の水によって形成された氷河の地形(V. R. Baker, 2001)、オデッセイが極域に検出した氷由来の水素(W. V. Boynton et al. 2002), マーズ・サイエンス・ラボラトリーによって火星表層から検出されたメタン、塩素化炭化水素(Freissinet et al. 2015)、マーズ・ルコネッサンス搭載機器の観測データから流水の痕跡(Ojha et al. 2015)などである。

 将来の日本の火星探査計画では、生体細胞を直接検出するために生体物質に反応する蛍光色素を用いた小型蛍光顕微鏡を搭載する計画があるが(山岸,2011; 2012)、本装置にレーザー誘起蛍光分光(Laser Induced Fluorescence Spectroscopy, LIFS)法を備え付ければ、細胞に限られない高空間分解能惑星物質調査が可能になる。そこで昨年の卒業研究では、火星表層模擬試料のLIFSスペクトルの特徴を理解することを目的とした。含水ケイ酸塩や水和塩を含む15種類の試料のLIFSスペクトルと蛍光強度変化のデータを取得した。今回の進捗報告では488nmの励起波長で蛍光が得られるかを硫酸カルシウム、ゼオライトを用いて行った実験について述べる。用いた装置は蛍光光度計と488nmの波長を取り出したArレーザーである。まず蛍光光度計を用いて励起光を488nmとして500nmから1000nmまでの蛍光を測定したが、スペクトル補正を行うことができなかったのでおおよそのスペクトルを取得した。次にArレーザーのレーザー光から488nmを取り出して試料に当て、出た蛍光を分光器、CCDカメラを用いて取得した。今回の結果から少なくとも今回測定した二つの試料については蛍光スペクトルは区別できることが明らかになった。

発表者名: 松田 貴博

タイトル: 局所U-Pb年代分析に向けたレーザーポストイオン化SNMSの開発

概  要:

 太陽系の形成過程を明らかにする上で、Uの放射壊変系を利用した局所U-Pb絶対年代分析は重要である。そのためには、天然鉱物に含まれる極微量のUとPbの同位体比を高精度に測定する必要がある。これまで微小領域における同位体を分析する手法として、二次イオン質量分析計(Secondary Ion Mass Spectrometer: SIMS)が広く使用されてきた。しかし、SIMSは、二次イオン化効率が数%以下と非常に低く、スパッタされた試料のうち大部分が中性粒子であるため、試料のロスに対して感度が低いという問題が存在する。そのため、極微小なサンプルに含まれる微量元素の同位体比を高精度で分析することが困難であった。このようなSIMSの問題を解決するために、現在我々のグループでは、スパッタされた中性粒子をフェムト秒レーザーでポストイオン化する二次中性粒子質量分析計(Sputtered Neutral Mass Spectrometer: SNMS)の開発を行っている。本装置が局所U-Pb年代分析に適用できるか確認するため、ジルコンのU-Pb年代分析において標準試料として用いられる91500ジルコンについて、本装置で測定を行った。前回の発表でサンプルに施した金コーティングに含まれているPbが91500ジルコンのPbの同位体比に影響を及ぼしている可能性が明らかとなった。その影響を確認するために、金コーティングと金コーティングとは別のコーティング、オスミウムコーティングを施したサンプルの測定を行った。今回の発表ではその結果を報告する。

発表者名: 宮 晃平

タイトル: 進捗報告:プレソーラーSiC粒子同位体分析

概  要:

 隕石中にごく微量に含まれるプレソーラー粒子は、先太陽系において恒星内部で行われていた元素合成の情報を同位体組成として保持している。これら微粒子から起源天体についての新たな情報(物理環境としての制約)を引き出すため、現在ポストイオン化2次中性粒子質量分析計をもちいてプレソーラーSiC粒子の同位体分析を進めている。

 前回はその基礎実験として、太陽系の同位体組成を持つMetal Mount(METM24-42)をサンプルに、SiC粒子の主要元素であるSi, C等の同位体比の測定再現性について報告した。結果、このサンプルについては50‰(1σ)程度の誤差で再現性が得られることを確認した。しかし実際の隕石中のSiC粒子の同位体分析時には、研磨剤SiCの同位体比を太陽系組成として考えてきた。これは粒子効果を想定してのことである。なので、Metal Mountで得られた再現性が粒子状の研磨剤SiCにも見られるかを確認する必要が懸念された。そして測定から研磨剤SiCでも同様の再現性が得られることが示唆され、今回の発表ではその検証実験について報告する。

 また最後に、プレソーラーSiC粒子の同位体分析の展望についても触れる。

発表者名: 田坂 直也

タイトル: 月極域における水同位体その場観測装置の開発

概  要:

 月面には常時外部供給源から揮発性物質が供給されている。近年リモートセンシング技術の発達などにより月極域には一定量の水が存在することが示唆されている。しかしその推定量はユニークなものではないため、存在量をはっきりさせるためには月極域でのその場観測が必須となる。さらに月面の水分子同位体を観測することで、起源の違いを知ることができる。そこで私は水分子の濃度測定、同位体測定が出来る装置のプロトタイプの開発、測定を行っている。今回の発表では分析装置の進捗発表を行う。

発表者名: 新述 隆太

タイトル: 月面のレゴリスサンプリング法の開発

概  要:

 近年リモートセンシングによる月の水の調査が行われており、月には微量ながら水が存在するということが分かってきた。地球には水が豊富にあるが、地球と似た成分で構成され地球の近くにある月には微量でしか水が存在していない。惑星はどこから水を供給され、保持し、そして水はどのように逃げていくのか。それを探るためには同位体比を調査することが必要不可欠である。そこで私たちは実際に月面に無人機を着陸させ、レゴリス中に含まれる水を採取し「その場」で観測をすることを目標としている。

 今回は月面砂のサンプリング方法と月の砂の性質について発表を行う。サンプリング方法としては砂にヘリウムガスを噴射し巻き上げて回収し、そこから水分を抽出するという方法を用いる。実験ではヘリウムでなく圧縮空気を用いる。その際に砂に含まれる水分量や周辺温度による砂の硬度、圧縮空気とヘリウムでの差異などの観点から、想定される採取量のデータを発表する。

発表者名: 前薗 大聖

タイトル: 火成岩の一軸圧縮で発生する電流の温度依存性

概  要:

 地震に先行する電磁気的現象として、電離層における電子密度(TEC)の異常が報告されている(Heki,2011)。この原因として、震央付近の地殻に表れるマクロな電気分極が考えられ、その分極メカニズムは、圧電補償電荷説、過酸化架橋の正孔励起説、間隙水の移動による流動電位説などが提唱されている。正孔励起説 (Freund, 2006) は、火成岩の圧縮によって、鉱物中の酸素過剰欠陥部分に正孔が励起し、濃度拡散で移動する説であり、継続時間の長い電磁気異常や地電位差異常を説明できる点で注目されている。この正孔濃度は、温度を上げると増えることが予想される。本研究では、火成岩を一軸圧縮したときに発生する電流の温度依存性を調べた。3×6×10cmの斑レイ岩を120℃まで加熱し、約5MPaを加え、岩石両端間の電流を測定した。結果として、圧縮中に流れる電流は50~100℃の範囲で6~60pAと、10倍程度増える傾向が見られた。

発表者名: 藤岡 光

タイトル: 始原小天体有機物の天体重爆撃模擬実験

概  要:

 約41~38億年前の天体重爆撃期に、地球外有機物が生命の材料として初期地球に供給されたと考えられている(Chyba and Sagan, 1992)。先行研究では、氷天体の模擬物質のガス銃衝撃実験で、アミノ酸が合成されるという報告(Furukawa et al., 2008, Martins et al., 2013)があるが、ガス銃で発生可能な衝撃速度は、地球脱出速度には及ばない。

 そこで、本研究では高強度レーザーを用いた炭素質隕石、模擬彗星氷の超高圧衝撃実験を行い、ガスクロマトグラム質量分析計で分析することにより、衝撃による小天体中有機物の組成変化を明らかにした。

 その結果、炭素質隕石中の多環式芳香族炭化水素については、20 GPaでは、ナフタレンが減少したこと以外は衝撃前とほとんど組成が変わらなかったが、50 GPa, 400 GPaでは、ピレン、フルオランテンの濃度が増加し、ビフェニル、アントラセン、フルオレノンの濃度は減少した。脂肪族炭化水素については、50 GPa,400 GPaで短鎖分子(C14~C17)の濃度が減少し、長鎖分子(C18~C24)の濃度が相対的に増加した。模擬彗星氷については、ジフェニルメタンやアルキル尿素と推定される化合物が検出された。本結果は、衝撃が有機物の芳香環の縮合や炭素鎖の重合を促進、生命起源に至る化学進化の出発物質になりえた可能性を示唆する。

発表者名: 諸本 成海

タイトル: 月隕石NWA2977のU-Pbシステマティックス

概  要:

 月の進化の歴史を探るうえで、月隕石は重要な研究対象の1つである。本研究では、2005年に北西アフリカで発見された斑れい岩質の月隕石NWA2977中の、天体衝突等のインパクトによる溶融~冷却の過程を経て作られる構造「ショックメルトベイン」に着目した。一般に、リン酸塩鉱物のU-Pb系は閉鎖温度が高く二次的な変成の影響を受けにくく、もし影響を受けても形成・変成の2つの年代情報を得られるという利点がある。そこで、高い空間分解能をもつ2次イオン質量分析計NanoSIMSを用い、メルトベイン内外に存在するリン酸塩鉱物のU-Pb年代分析を行った。

 その結果、NWA2977のリン酸塩鉱物の形成年代は約31億年と求まり、これは先行研究の結果とおおむね一致する一方、有意な変成を示すデータ点は得られなかった。このことから、ショックベインは形成されたものの、リン酸塩鉱物のU-Pb放射壊変系を乱すほどの熱変成は受けていない可能性が明らかになった。

発表者名: 前薗 大聖

タイトル: 巨大地震前に見られる電磁気的現象のメカニズムの解明

概  要:

 M8を越える巨大地震の前兆現象として、地震発生40分程前から震源地上空のTEC(電離層総電子数)が見られている。このTEC異常は震源地上空に限られているため、地震との強い関連が考えられている。このメカニズムは、岩石に圧力が加わり分極し、この分極を補うように周囲の自由電荷が移動し、電流が流れ、地上の電場が変動し電離層が乱れると考えられている。

 今回のセミナーでは、GPSTECの説明、分極メカニズムとシミュレーションの例、圧力を加えて生じる分極、電流の温度依存性の実験結果について発表する。

発表者名: 新述 隆太

タイトル: 低温下にある月レゴリスのサンプリング法開発

概  要:

 近年リモートセンシングによって月面水の調査が行われており月極域に水の存在が示唆されている。月面に存在する水の起源を知るためには同位体組成を知ることが重要であり、実際に月面に無人機を着陸させ水の同位体比をその場で観測することを目標にしている。

 今回のセミナーでは採集方法と月のレゴリスの硬度や空隙率、粒径を説明する。そしてそれに対してサンプリングする装置の課題や目標を発表する。

発表者名: 諸本 成海

タイトル: 月隕石NWA2977のウラン−鉛システマティックス

概  要:

 月の進化について議論をするうえで、月隕石やアポロ計画・ルナ計画によるサンプルは重要な研究対象の一つである。

 本研究では、2005年に発見された斑れい岩質月隕石NWA2977について、2次イオン質量分析計NanoSIMSによるU-Pb局所同位体分析を行った。このサンプルには、天体衝突等のイベントでできたと思われるショックメルトベインが存在することや、UやThなどを含む不適合元素に比較的富んでいるといった特徴がある。結晶化年代及び変成年代の2つの年代情報と、サンプルのマグマソース起源に関する情報のμ値(238U/204Pb比)を得ることのできるU-Pb法を用いることで、NWA2977の火成史・衝突史を明らかにしようと試みた。今回の発表では、U-Pb法の原理やNanoSIMSによるスポット分析の結果を紹介し、得られた結果について考察を行う。

発表者名: 藤岡 光

タイトル: 始原小天体物質の高強度レーザー衝突実験

概  要:

 天体重爆撃期に小惑星や彗星が初期地球に衝突した際、有機物が生命の材料として地球に供給されたと考えられている。この仮説を実証するためにガス銃による有機物の衝撃合成が既に証明されている(例えば Martins et al., 2013)。しかし、ガス銃での実験は地球脱出速度(>11Km/s)に相当する超高圧(~400GPa)の発生が難しく、閉鎖系であるという問題がある。そこで、私たちはこの問題点を解消するために、激光XII号レーザーを用いて氷天体の模擬物質、マーチソン隕石の超高圧開放系衝撃実験を行いたいと考えている。

 現在はすでに実験が完了している試料についての解析を行っており、今回のセミナーでは、マーチソン隕石についての解析結果を中心に現在までの進展を発表する。

発表者名: 田坂 直也

タイトル: 月-地球系の水の出自解明に向けた測定原理

概  要:

 近年、月面における水の存在が示唆され始めていて、人々の注目を大きく集めている。月面水は、月-地球系の水の出自を紐解くことができる重要な鍵を握っているかもしれない。しかし、月面の水の挙動については未解明の部分も多い。

 水の起源を知る手がかりとして、安定同位体の測定が挙げられる。水分子は水素と酸素からなるが、それぞれの同位体比は供給源(Solar Wind Meteorites Comets Lunar Rocks)によって異なる組成を持つことが知られている。今回のセミナーでは、同位体の持つ情報と水の出自を知るために必要な情報についてのまとめを中心に発表する。

発表者名: 椎野 朱里

タイトル: 火星表層模擬試料のレーザー誘起蛍光分光分析

概  要:

 1960年代から始まったNASAによる数々の火星探査により、火星に生命が存在した(存在する)可能性を示す地形学的・物質化学的証拠が増えてきている。例えば、マーズ・グローバル・サーベイヤーが発見した、液体の水によって形成された氷河の地形(V. R. Baker, 2001)、オデッセイが極域に検出した氷由来の水素(W. V. Boynton et al. 2002)、マーズ・サイエンス・ラボラトリーによって火星表層から検出されたメタン、塩素化炭化水素(Freissinet et al. 2015)、マーズ・ルコネッサンス搭載機器の観測データから流水の痕跡(Ojha et al. 2015)などである。

 将来の日本の火星探査計画では、生体細胞を直接検出するために生体物質に反応する蛍光色素を用いた小型蛍光顕微鏡を搭載する計画があるが(山岸,2011; 2012)、本装置にレーザー誘起蛍光分光(Laser Induced Fluorescence Spectroscopy,LIFS)法を備え付ければ、細胞に限られない高空間分解能惑星物質調査が可能になる。そこで昨年の卒業研究では、火星表層模擬試料のLIFSスペクトルの特徴を理解することを目的とした。含水ケイ酸塩や水和塩を含む15種類の試料のLIFSスペクトルと蛍光強度変化のデータを取得した。今年度では、硫酸カルシウム二水和物について長時間レーザーを当て続けて蛍光スペクトルが変化するか、分光器のスリット幅で蛍光が変化するか条件を変えて測定を行った。硫酸カルシウム二水和物の蛍光スペクトルの昨年と今年度の違いから分光器の波長が時間や環境変化によってわずかにずれることが判明した。そこでデータの解析の際に波長校正を行ったところ、硫酸カルシウム二水和物については再現性を得ることができた。

発表者名: 松田 貴博

タイトル: 局所U-Pb年代分析に向けたレーザーポストイオン化SNMSの開発

概  要:

 太陽系の形成過程を明らかにする上で、Uの放射壊変系を利用した局所U-Pb絶対年代分析は重要である。そのためには、天然鉱物に含まれる極微量のUとPbの同位体比を高精度に測定する必要がある。これまで微小領域における同位体を分析する手法として、二次イオン質量分析計(Secondary Ion Mass Spectrometer: SIMS)が広く使用されてきた。しかし、SIMSは、二次イオン化効率が数%以下と非常に低く、スパッタされた試料のうち大部分が中性粒子であるため、試料のロスに対して感度が低いという問題が存在する。そのため、極微小なサンプルに含まれる微量元素の同位体比を高精度で分析することが困難であった。このようなSIMSの問題を解決するために、現在我々のグループでは、スパッタされた中性粒子をフェムト秒レーザーでポストイオン化する二次中性粒子質量分析計(Sputtered Neutral Mass Spectrometer: SNMS)の開発を行っている。

 本装置が局所U-Pb年代分析に適用できるか確認するため、U含有量が高い変質ジルコン(シルト石)とジルコンのU-Pb年代分析において標準試料として用いられる91500ジルコンについて、本装置で測定を行った。本装置を用いたサブミクロンスケールの局所U-Pb年代分析の現状について今回のセミナーで発表する

発表者名: 宮 晃平

タイトル: MULTUM-SNMSを用いたMurchison SiCの同位体分析

概  要:

 Murchison隕石をはじめとする始原的隕石中には、太陽系形成初期の高温過程などによる同位体的均質化を免れたプレソーラー粒子が微量に存在することが知られている。これら微粒子の同位体比は、太陽系前駆天体での元素合成の情報などを保持しており、AGB星やSupernovaにおける物理環境に制約を与えることができる。

 本研究ではプレソーラー粒子の1つであるSiC粒子に着目し、同位体分析にはMULTUM-SNMS(飛行時間型2次中性粒子質量分析計)を用いた。まずSiC粒子の同位体分析に先立ち、研磨剤SiCや標準試料であるMetal Mountで分析を行い、terrestrialな同位体比の再現性を検証した。その結果、50‰程度の範囲内での再現性が確認されたが、同時に、検出されるイオンの量によってはMCPでの数え落としが同位体比に影響を及ぼすことが示唆された。このことを考慮した上で、Murchison隕石の酸残渣から検出したSiC粒子のSi及びCの同位体組成を分析し、それらがMainstream(AGB星起源)であることを推定した。

 最後に、今後の課題としての分析装置の更なる最適化や、展望として、プレソーラー粒子の起源天体の物理環境に制約を与えることができる微量元素同位体分析への可能性について述べる。

発表者名: 薮田 ひかる

タイトル: 南極表層雪から回収された宇宙塵から、隕石ではわからない初期太陽系物質進化を読み解く

概  要:

 太陽系と生命の起原を解明するために、小惑星や彗星に含まれる有機物の組成・分布を明らかにし初期太陽系物質進化を理解することは、アストロバイオロジーにおける重要な切り口の一つである。地球外有機物の起源と生成環境に制約を与えるには、有機物だけではなく、化学・物理的に関係しあった無機物の分布・組成を共に理解することが非常に重要である。我々は、隕石よりも始原的な進化段階の有機-無機相互作用を解明する目的で、南極ドームふじ基地周辺から採取した表層雪をろ過して得られる南極雪宇宙塵(微隕石,MM)の分析化学研究を行ってきた。これらのMMは、成層圏で採取される惑星間塵と共通して非晶質ケイ酸塩GEMS(glass with embedded metal and sulfides)を含むことから、彗星に由来すると考えられている。

 GEMSを含む試料を無水MMと分類し、中でも極度に有機物含有量が高い試料を超炭素質MMとして同定した。非晶質ケイ酸塩と含水ケイ酸塩が共存する試料はごく軽度に水質変成を受けた含水MM、含水ケイ酸塩が主成分であるものは強度に水質変成を受けた含水MM、と細分類した。無水MMでは有機物が広域に分布したのに対し、含水MMで有機物に乏しかった。水質変成が進んだ含水MMは炭素質CMコンドライト隕石中の不溶性有機物組成に類似したが、無水MMでは含水MMに比べてカルボニル基C=Oの割合が芳香族炭素C=Cよりも相対的に高かった。中でも、重水素(δD = 8000-10000‰)と窒素15(δ15N= 600-1000‰)の濃集が見られた無水MMでは脂肪族炭素、C=O、ニトリルC≡N、プリン環に富む有機物を含み、多数の有機ナノグロビュールが観察された。これらの特徴は、星間分子雲や原始惑星系円盤外縁などの極低温環境で酸素や窒素に富む高分子有機物が形成した証拠である。このような前駆物質が、後に彗星母天体上で極軽度の水質変成を受け、親水基が分解し、含有量が減少して、芳香族性の高い隕石有機物類似の組成に変化した、という形成過程を描くことができる。惑星間塵中のGEMSは0-25℃、1日〜数週間程度の水熱作用で含水鉱物に変化したとの実験研究(Nakamura-Messenger et al. 2011)を参考にすると、彗星のような氷小天体でも短期的に液体の水が生じる条件があれば、前駆物質は化学変化した可能性が高い。

  超炭素質MMは、イミン、ニトリル、芳香族窒素、アミドといった窒素官能基に富む有機物を含み含水鉱物を含まない点では無水MMと共通するが、Fe-Niメタルに乏しいGEMS、Niの多い硫化物(pyrrhotite)、有機硫黄化合物、変形した有機ナノグロビュール、有機物界面に生じる鉱物皮膜など、わずかな水質作用を経験した複数の痕跡が観察された。以上から、超炭素質MMは、彗星表面へ局所的に起こった衝突作用で氷が解けて水が生じた部分に有機物が溶け込み濃縮した産物である可能性が考えられた。また、このような物質科学的特徴は一部の81P/Wild2彗星塵や炭素質CR3コンドライトにも類似したことから、超炭素質MMは彗星と小惑星の連続性を裏づけ、初期地球に有機物を供給した小天体に制約を与えられる太陽系始原物質として期待できる。

発表者名: 赤井 真道

タイトル: アルゼンチンNeuquén盆地K/Pg境界堆積岩中の有機分子分布と大量絶滅事変の影響に関する地理的比較

概  要:

 約6600万年前の生物大量絶滅と地球環境変動は、世界各地で発見されている白亜紀/第三紀 (K/Pg) 境界粘土層中の古生物学・地球化学的記録に証拠づけられている。例えば、大量絶滅の原因として有力な巨大天体衝突説を支持するIr濃集 (e.g., Alvarez et al. 1980) はほぼ全てのK/Pg境界層に共通して見出されている。しかし、全有機炭素量 (TOC) 等の分布が各境界層で異なる原因については言及されていない。本研究では、当時の地球環境変動が生命に及ぼした影響の地域的差異とその要因を理解するため、北半球に比べ研究の少ない南半球のアルゼンチンK/Pg境界層に着目し、炭素・硫黄含有量および数種の生物指標分子の分布を解明することで、他地域との比較を行った。

 試料には、アルゼンチンNeuquén盆地Bajada del JagüelセクションのK/Pg境界層とその上下層で採取された深度の異なる15種の堆積岩粉末 (2-145mg) を用いた。3N塩酸を滴下して炭酸塩を除去した試料を有機炭素分析に用意した。各試料のTOC、全硫黄量 (TS) を高知大学海洋コア総合研究センターのCHNS元素分析装置 (Flash EA 1112) で測定した。また、各堆積岩の可溶性有機成分をジクロロメタン/メタノール混合溶液で超音波抽出し、窒素噴霧下で100μlに濃縮後、ガスクロマトグラフ質量分析計 (GC-MS) で測定した。有機分子の同定にはマススペクトルのライブラリデータベースを用いた。また、各化合物のピーク面積を用いて相対深度分布を調べた。

 TOCは白亜紀層 (0.3-0.4wt%) から境界層 (0.1-0.2wt%) にかけて減少し、第三紀層で再び回復した (0.4-0.5wt%) 。生物大量絶滅を反映するこのような分布傾向は、TOCが境界層で高いスペイン・カラバカ (Kaiho et al. 1999) 、TOCが境界層と上下層で一定である北海道川流布 (Mita et al. 1996) とは対照的であった。この違いは、南半球で森林火災の影響が少なく煤の寄与が低かったためと考えられる。一方、TSは白亜紀層で検出限界以下であったが、境界層 (0.3-5.0wt%) で増加しその上部で最大値を示した後、第三紀層 (0-0.3wt%) にかけて再び減少した。このような分布は川流布 (Kajiwara and Kaiho, 1992) やアメリカ・ドギークリーク (Maruoka et al. 2002) でも報告されており、硫酸還元菌の活動による硫化物生成の原因として考えられている酸性雨が地球規模であった可能性を支持する。

 また、今回同定したあらゆる生物起源指標分子は、境界層で減少した。特に、海棲生物由来の短鎖n-アルカン、陸上植物由来の⻑鎖n-アルカン濃度の深度分布の比較から、アルゼンチン地域では海棲生物への絶滅の影響がより大きく、陸上植物は絶滅後の回復が比較的早かったと考えられる。さらに、裸子植物由来のレテン、デヒドロアビエチン酸、被子植物由来のカダレン、バニリン、地衣類・真菌類由来のジベンゾフランの深度分布は大きな違いがなかったことから、アルゼンチン地域では絶滅による植生の変動は少なかったものと推測される。

 このように、6600万年前の生物大量絶滅イベントに伴う、北半球とは異なる南半球の環境変動、生命活動の変化を見出した。

発表者名: 新述 隆太

タイトル: 宇宙圏での軽元素同位体測定レーザー装置の開発

概  要:

 近年リモートセンシングによって月面水の調査が行われており月極域には水の存在が示唆されている。 月面に存在する水の起源を知る為には同位体組成を知ることが重要であり、 実際に月面に無人機を着陸させ水の同位体比を「その場観測」することが目的である。 現在はミッションに必要な赤外レーザー装置とレゴリス採取装置の開発を進めている。 今回は候補となるレーザー装置2種とレゴリス採取装置がどのようなものかを述べ、今後の課題を発表する。

発表者名: 藤岡 光

タイトル: 始原小天体物質の高強度レーザー衝突実験

概  要:

 天体重爆撃期に小惑星や彗星が初期地球に衝突した際、有機物が生命の材料として地球に供給されたと考えられている。この仮説を実証するためにガス銃による有機物の衝撃合成が既に証明されている (例えば Martins et al., 2013)。しかし、ガス銃での実験は地球脱出速度 (>11Km/s) に相当する超高圧 (~400GPa) の発生が難しく、閉鎖系であるという問題がある。そこで、私たちはこの問題点を解消するために、激光XII号レーザーを用いて氷天体の模擬物質、マーチソン隕石の超高圧開放系衝撃実験を行いたいと考えている。

 今回のセミナーでは、ガス銃による実験についての論文 (Shock synthesis of amino acids from impacting cometary and icy planet surface analogues, Martins et al., Nature Geoscience, 2013) を紹介し、自らの研究との関連について発表する。

発表者名: 前薗 大聖

タイトル: 地震発生前に見られるTEC異常のメカニズムの解明

概  要:

 1994〜2015年のM8以上の地震8回で、地震発生40分ほど前から震源上空のTEC異常が見られ関心を持たれている。TECとは電離層総電子数 (Total Electron Content) のことで、GPS電波が電離層によって遅延されることを用いて算出することができる。このTEC異常は地震震源上空に限定していて、太陽によるものではなくその原因は地震にある可能性が高い。セミナーではそのメカニズムの仮説と今後の研究テーマを発表する。

発表者名: 諸本 成海

タイトル: 月隕石NWA2977のウラン−鉛システマティックス

概  要:

 月の進化について議論をするうえで、月隕石やアポロ計画・ルナ計画によるサンプルは重要な研究対象の一つである。

 卒業研究では、月隕石NWA2977について、2次イオン質量分析計NanoSIMSによるU-Pb局所同位体分析を行う。この隕石の特徴は、先行研究において求められた岩石の形成年代が、アポロ・ルナ計画によるサンプルから求められた月の火成活動の年代よりも若い年代を示すことである。しかし、この隕石の年代測定にはAr-Ar法が用いられており、天体衝突などの二次的な変成イベントの影響を受けた結果として若い年代が出ている可能性がある。そこで本研究では、二次的な変成の影響を受けにくいU-Pb法を用いる。さらにU-Pb法には、Uに2種類の放射壊変系があることを利用して形成年代と変成年代の両方を導き出せるというメリットもある。U-Pb法のこういったメリットとNanoSIMSの高い空間分解能を活かし、ショックベイン内外のリン酸塩鉱物のU-Pbシステマティックスについて独立に分析を行うことで、NWA2977の火成史・衝突史を明らかにするのが、本研究の大きな目的である。今回の発表では、研究の要となるU-Pb法の原理や、ターゲットであるリン酸塩鉱物をSEM-EDSで観察・分析して得られた結果についても紹介する。

発表者名: 荻野 理史

タイトル: 高純度石英ガラスの磁気異方性

概  要:

 分子雲コアや星形成領域に存在する星間磁場は、ダストから惑星に至る進化を支配する主要な要素の一つであると考えられている。その星間磁場の観測方法の一つに偏光観測がある。これは、磁場により整列した星間ダストがスリットの役目をはたして偏光する、というものである。そこで本研究では、磁気異方性によるダストの磁場整列機構の検証にあたる。この機構は、ダストのもつ磁気異方性Δχにより磁気的トルクが生じ整列するというものである。ダストのほとんどは等方的とみなされる非晶質シリケイトであるが、磁性イオンの存在や固化直前のシリケイトメルトの伸長などによって磁気異方性Δχを持ちうることがわかっている。

 そこで本研究では固化直前の変形による磁気異方性を研究すべく、磁性イオンのなるべく少ない高純度の石英ガラス(Fe濃度0.2ppm)を原材料とし、伸長、膨張させながら急冷したものを試料としてΔχ測定、磁化測定を行った。その結果、試料が引き伸ばされる方向が磁化容易軸、垂直な方向が磁化困難軸であるとわかった。また、得られた磁化曲線は常磁性的な曲線を描いており、本来反磁性のガラスがドープ無しに常磁性を示すのは前例が無い。また、ESR測定ではE’centerという種類の欠陥が見られた。これは応力によってできうる欠陥である。セミナーではアニール温度での違いなど、より詳しい情報を発表する.

発表者名: 椎野 朱里

タイトル: 火星表層模擬試料レーザー誘起蛍光分光分析

概  要:

 将来の日本の火星探査計画では生体物質を検出する目的で蛍光顕微鏡を搭載する計画があるが、本装置にレーザー誘起蛍光分光(LIFS)法を備え付ければ、細胞に限られない惑星物質調査が可能になる。昨年の卒業研究では、15種類の試料のLIFSスペクトルと時間変化のデータを取得した。今回はその昨年の研究の再現性を確かめるために2種の試料を系を組みなおしてデータを取得した。また今後の予定としてストリークカメラを用いることを発表する。

発表者名: 宮 晃平

タイトル: SiC grainの微量元素同位体分析(Sr, Zr)

概  要:

 太陽系や銀河といった宇宙の進化を解明していく上で、金属量(metalicity)の増加は重要な手がかりとなり得る。宇宙空間においてこの金属量の増加を主に担っているのが恒星内部での元素合成であり、Fe以降の重元素に関しては中性子捕獲反応により形成されるものがほとんどである。これら中性子捕獲反応の内、AGB starの進化の過程で起きるs-processでは、非常に多種多様な核種が形成される。

 本実験では、s-process核種であるSr及びZrに着目し、Murchison隕石から単離したSiCをターゲットにし、レーザーポストイオン化SNMSを用いての同位体分析を試みた。ここで留意しておきたいのが、これらの核種の元素濃度である。Sr濃度は粒子毎によって異なるが、概ね数ppmもしくはそれ以下であると言われている(Amari, 1995)。対してZrはその10〜100倍の濃度である。これらの観測事実から、単一粒子での分析は困難とされ先行研究ではaggregateでの分析がほとんどであった。

 本実験の結果であるが、まずSrについては各同位体に有意にピークを得ることができなかった。Zrについては、複数の干渉ピーク中にZrと思われるピークを検出することができた。この結果は、装置の検出感度 数10〜数100ppmを考慮すると妥当な結果と言える。

 発表では一連の実験とその結果について報告する。

発表者名: 田坂 直也

タイトル: 月極域におけるリモートセンシング探査の紹介

概  要:

 近年リモートセンシング技術の発達などにより月極域には一定量の水が存在することが示唆されている。しかしその測定手法は様々で人によって解釈が異なる。今回の発表では、それらの中からいくつかの論文を紹介し、今後の展望とともに発表する。

発表者名: 赤井 真道

タイトル: アルゼンチンNeuquén盆地白亜紀/第三紀(K/Pg)境界堆積岩中の炭素・硫黄含有量分布と大量絶滅事変の南半球生命圏への影響

概  要:

 約6600万年前の生物大量絶滅と地球環境変動は、世界各地で発見されている白亜紀/第三紀(K/Pg)境界粘土層中の古生物学・地球化学的記録に証拠づけられている。例えば、大量絶滅の原因として有力な巨大天体衝突説を支持するイリジウム濃集(e.g., Alvarez et al. 1980)はほぼ全てのK/Pg境界層に共通して見出されている。しかし一方で、全有機炭素量(TOC)等の分布が各境界層によって異なる点についてはあまり言及されていない。本研究では、当時の地球環境変動が生命に及ぼした影響の地域的差異とその要因を理解するため、北半球に比べ研究の少ない南半球のK/Pg境界層に着目した。具体的には、アルゼンチンNeuquén盆地K/Pg境界堆積岩に含まれる炭素・硫黄含有量の分布を明らかにし、他地域のK/Pg境界層におけるそれらの分布と比較した。また、当時の生命活動の指標となる有機分子の深度分布を知るために、各堆積岩の可溶性有機成分をジクロロメタン/メタノール混合溶液で抽出し、GC-MSで測定した。

 今回のセミナーでは、本研究で検出された、バイオマーカーとなり得る有機分子の紹介を中心に、これまでに得られたデータとその考察について紹介する。

発表者名: 松田 貴博

タイトル: 局所同位体分析に向けたレーザーポストイオン化SNMSの開発

概  要:

 太陽系の形成過程を明らかにする上で、Uの放射壊変系を利用した局所U-Pb絶対年代分析は重要である。そのためには、天然鉱物に含まれる極微量のUとPbの同位体比を高精度に測定する必要がある。これまで微小領域における同位体を分析する手法として、二次イオン質量分析計(Secondary Ion Mass Spectrometer: SIMS)が広く使用されてきた。しかし、SIMSは、二次イオン化効率が1%以下と非常に低く、スパッタされた試料のうち大部分が中性粒子であるため、試料のロスに対して感度が低いという問題が存在する。そのため、極微小なサンプルに含まれる微量元素の同位体比を高精度で分析することが困難であった。このようなSIMSの問題を解決するために、現在我々のグループでは、スパッタされた中性粒子をフェムト秒レーザーでポストイオン化する二次中性粒子質量分析計(Sputtered Neutral Mass Spectrometer: SNMS)の開発を行っている。

 本装置が局所U-Pb絶対年代分析に適用できるか確認するため、U含有量が高い変質ジルコン(シルト石)、天然鉱物で年代が約39億年とわかっているGreenlandのジルコン、ジルコンのU-Pb年代分析において標準試料として用いられる91500ジルコン、および91500ジルコンよりU含有量が高く、年代が古いQGNGについて、本装置で測定を行った。その結果と考察を今回のセミナーで発表する。

発表者名: 橋爪 光

タイトル: 地球コア形成が及ぼした大気組成への重大な影響

概  要:

 金属鉄コアには約10%の軽元素が含まれることが、地震学的研究をもとに古くから示唆されている。金属鉄に効率的に吸収されうる軽元素候補のいくつかは、実は、地球表層で大気・海洋・生命として主役を担う元素でもある。水素、炭素、窒素などである。本研究では、地殻・大気・海洋を含む、広義の地球岩石圏における炭素・窒素の存在度に重大な影響を及ぼしたと考えるコア形成イベントに注目する。

 金属鉄とケイ酸塩を高温・高圧(3GPa以上, 1600oC前後)の下で加熱し、全溶融状態で両元素がどの程度の割合で金属鉄・ケイ酸塩に分配されるかを実験的に求めた。両元素の親鉄的な属性が確認されたが、その程度は、温度、圧力、岩石組成その他のパラメータに依存して相当変化することがわかった。本研究の最も重要な発見は、窒素と炭素の親鉄性(分配係数)の相対的な違いが諸パラメータにほとんど依らず、ほぼ一定であることである。窒素は常に、炭素に比べて約1.5 LogUnit高い親鉄性を示すことがわかった。セミナーでは、実験の概要、結果とその示唆を手短に紹介する。

発表者名: 橋口 友美

タイトル: Luna24レゴリスサンプルの年代分析に向けて

概  要:

 月の進化を議論する上でもととなる年代学的な情報は主に米国のアポロ有人探査や旧ソ連のルナ無人探査によって持ち帰った試料によってもたらされた。月表土は長年の小天体の衝突により試料が破砕・細粒化されている。空間分解能の高い局所年代分析法の向上により、100ミクロンサイズ以下に破砕した試料中に微量に含まれる放射性元素の壊変の痕跡と鉱物学的な特徴の考察から、衝突破砕する以前に月面で起こったさまざまなイベントの議論が可能になってきた。本研究では、ルナ24号が危機の海(Mare Crisium)のレゴリス層の深さ130-132cmから回収したサンプルを観察し、最終的には様々なイベントの年代情報を得ることが目的である。

 これまで、サンプルの作成、SEM-EDSによる鉱物観察と化学組成分析を行った。鉱物観察の結果、U-Pb絶対年代分析が可能な鉱物アパタイトが数箇所確認できた。また、レゴリス粒子一粒一粒の起源(高地または海)を調べるため、輝石中に含まれるTi濃度の分析を行った。今回のセミナーではこれまでの分析結果とその考察について紹介する。

発表者名: 荻野 理史

タイトル: 高純度石英ガラスの磁気異方性

概  要:

 星間磁場は、星の形成過程において様々な作用を及ぼすと考えられている。星間磁場の観測には数種類の方法があるが、本研究では、星の光の偏光から磁場を観測する方法に着目する。これは、形の異方性をもつ星間ダストが部分整列することでスリットの役目を果たし偏光するというものである。星間ダスト整列機構には様々なものが提唱されているが、完全には解明されていない。

 本研究では、磁気異方性エネルギーによるダスト整列機構を検証する。これは、磁気異方性エネルギーがブラウン運動エネルギーを1桁程度上回ったときに整列するというものである。しかし星間ダストのほとんどは非晶質で、非晶質の磁気異方性Δχはほぼゼロと考えられていたため、この機構ではダスト整列を説明できないとされてきた。ところが非晶質でありながらも、磁性元素を含むなどといった条件によってはΔχを持ちうることが先行研究によって明らかになった [Yokoi et al 2014]。

 本研究では、磁性元素に起因しない磁気異方性の可能性をさぐる。具体的には高純度石英ガラスを出発物質として、膨張、伸長、急冷などの熱加工を行ったものを試料とする。この試料のΔχを測定し、磁気異方性によるダスト整列機構を検証する。同時に、電子スピン共鳴ESRを行うことで、異方性が原子レベルでどのように発生するのかを探る。

発表者名: 田坂 直也

タイトル: 月探査における水分子同位体その場観測装置の開発

概  要:

 近年リモートセンシング技術の発達などにより月極域には一定量の水が存在することが示唆されている。月面に存在する水の起源を知るには、同位体組成の情報が重要である。将来の月面着陸ミッションにおいてその場観測を行うため、私は水素、酸素の同位体組成分析が行える宇宙機搭載用の光学分析装置の開発を目指している。

 今回の発表では、候補となる光学分析法の原理を述べ、月面で心配される課題と要求される技術を発表する。

発表者名: 植田 千秋

タイトル: 反磁性異方性に起因する酸化結晶の磁場整列特性

概  要:

 自然界には膨大な種類の酸化結晶が存在し、それらは立方晶と非晶質を除き、反磁性異方性Δχにより磁場整列を引き起こす可能性がある。しかし、個々の物質のΔχ値が測定されることは少なく、上記の可能性はあまり認識されていない。私たちは微小重力環境を利用した独自の方法で、主要なケイ酸塩鉱物のΔχ値を集積してきており、その結果、Δχは、結晶を構成する結合軌道の結晶軸に対する配向度に依存することがわかった [解説:日本物理学会誌62, 245- ]。すなわち室温で液体に分散させた酸化結晶の粒子(~φ1μm)は、磁性イオンを含まなくても、概ね2テスラ以下の比較的低磁場で整列する事になる[APL 86, 094103 ]。上記機構の概要を解説すると共に、最近の展開 [ e.g. JACS 133, 1824- ]も紹介する。

発表者名: 宮 晃平

タイトル: レーザーポストイオン化SNMSを用いたMurchison SiCの同位体分析

概  要:

 Murchison隕石をはじめとする始原的隕石には、ごく微量ながら(~1ppm)太陽系形成時の高温過程を免れたgrainが存在する。すなわち高温による同位体的均質化が起きなかったのである。これらのgrainは、宇宙空間における重元素の主な供給源であるAGB星やSupernovaを起源に持つことが、その同位体比の分析から同定される。

 今回我々は、Murchison隕石から酸処理によって高温凝縮鉱物のみを分離し、その残渣からSEM-EDS分析によりSiCと思われるgrainを14粒程検出した。さらにこれらをレーザーポストイオン化SNMSを用いて、主要構成元素であるSiとCについて同位体分析を行った。分析により、Siの同位体比に異常を示すgrainを確認した。

 今回の発表では、これらの結果についてterrestrialな物質である研磨剤SiCの同位体比と比較した上で考察していく。

発表者名: 赤井 真道

タイトル: アルゼンチンNeuquén盆地白亜紀/第三紀(K/Pg)境界堆積岩中の炭素・硫黄含有量分布と大量絶滅事変の南半球生命圏への影響

概  要:

 約6500万年前の生物大量絶滅と地球環境変動は、世界各地で発見されている白亜紀/第三紀(K/Pg)境界粘土層中の古生物学・地球化学的記録に証拠づけられている。例えば、大量絶滅の原因として有力な巨大天体衝突説を支持するイリジウム濃集(e.g., Alvarez et al. 1980)はほぼ全てのK/Pg境界層に共通して見出されている。しかし一方で、全有機炭素量(TOC)等の分布が各境界層によって異なる点についてはあまり言及されていない。本研究では、当時の地球環境変動が生命に及ぼした影響の地域的差異とその要因を理解するため、北半球に比べ研究の少ない南半球のK/Pg境界層に着目した。具体的には、アルゼンチンNeuquén盆地K/Pg境界堆積岩に含まれる炭素・硫黄含有量の分布を明らかにし、他地域のK/Pg境界層におけるそれらの分布と比較 した。また、当時の生命活動の指標となる有機分子の深度分布を知るために、各堆積岩の可溶性有機成分をジクロロメタン/メタノール混合溶液で抽出し、GC-MSで測定した。

 セミナーでは、これまでに得られたデータとその考察について紹介する。

発表者名: 松田 貴博

タイトル: 局所同位体分析に向けたレーザーポストイオン化SNMSの開発

概  要:

 太陽系の形成過程を明らかにする上で、Uの放射壊変系を利用した局所U-Pb絶対年代分析は重要である。そのためには、天然鉱物に含まれる極微量のUとPbの同位体比を高精度に測定する必要がある。これまで微小領域における同位体を分析する手法として、二次イオン質量分析計(Secondary Ion Mass Spectrometer: SIMS)が広く使用されてきた。しかし、SIMSは、二次イオン化効率が1%以下と非常に低く、スパッタされた試料のうち大部分が中性粒子であるため、試料のロスに対して感度が低いという問題が存在する。そのため、極微小なサンプルに含まれる微量元素の同位体比を高精度で分析することが困難であった。このようなSIMSの問題を解決するために、現在我々のグループでは、スパッタされた中性粒子をフェムト秒レーザーでポストイオン化する二次中性粒子質量分析計(Sputtered Neutral Mass Spectrometer: SNMS)の開発を行っている。

 本装置が局所U-Pb絶対年代分析に適用できるか確認するため、Pbプレート、U含有量が高い変質ジルコン(シルト石)、ジルコンのU-Pb年代分析において標準試料として用いられる91500 ジルコンについて、本装置で測定を行った。その結果と今後の展望を今回のセミナーで発表する。

発表者名: 山中 千博

タイトル: 地震前GPSTEC異常解明に向けた室内実験および電離層シミュレーション

概  要:

 1994-2015年の間の全地球におけるM8級地震8回のすべてについて、地震発生40分ほど前から震源上空のGPSTEC(GPS電波の遅延を用いて計測される電離層総電子数)に異常が見られたことがわかった。(Heki, Enomoto, 2015)。この8例すべてにおいて先行時間と変化の大きさがモーメントマグニチュードMwに依存する関係が見られている。

 仮にこのようなイベントが地震活動と関係なくランダムに、たとえば10時間に一回あるとして、上記の8例のうちTEC変化量が>3TECU/hr(1.5時間以内に先行)であった5例をとって、そのすべてがノイズであった確率は、(1.5/10)の当たり確率のくじを5回当てる確率であるので、(1.5/10)^5 = 7.6E-5 という稀な現象をみたことになる。すなわち、これらは地震の前兆現象を捉えたと考えるべき(地震火山噴火予知協議会部会長 中谷正生氏コメント)といえる。

 太陽など宇宙起源の電離層擾乱はよく知られているが、それらの影響を除いてなお、地震と相関する電離層異常現象は、その起源を地球側に求めるべきであろう。この異常の原因として、地殻岩石の 電気的分極が考えられ、圧電補償電荷説、岩石中の過酸化架橋の正孔励起、間隙水の移動による流動電位などのモデルが提唱されている。我々は室内実験によって岩石の電気的分極パラメーターを求め、観測との比較を進めてきた。また、地殻電流や電荷による電離層プラズマパラメーターの変化をスパコンを用いたシミュレーションで解き明かそうとしている。これらの進展について述べることとする。

発表者名: 蓮中 亮太

タイトル: 隕石有機物の投影型イメージング質量分析

概  要:

 宇宙有機物は太陽系形成前から存在しており、それは星間物質であるH、C、N、Oなどが、分子雲と呼ばれる星間空間でも密度の濃く低温な環境で合成、生成されたと考えられている。分子雲の一部は収縮し原始太陽系星雲となり、塵やガスが集積し太陽を初めとする惑星が作られた。この太陽系以前の有機物は惑星として取り込まれなかった微惑星、小惑星として保存された。生命の誕生に関してアミノ酸などの生体関連分子が宇宙でどのように生成進化してきたのかという大きな問題に対して隕石有機物の同定は非常に重要である。近年、隕石有機物に含まれる微小な有機物の官能基、同位体組成をほぼ非破壊でその場観測する技術・装置が実用化されてきている。しかし、微小領域における質量分析はあまり進んでいない。そこで広範囲を高分解能、比較的非破壊で質量分析できる投影型イメージング質量分析計の実用化を目標として、予備実験を進める。今回はBruker社製Ultraflex MALDI-TOF/MSを用いた分析を行った。またマトリックスとしてa-cyano-4-hydroxycinnamic acid (CHCA)を用いた。

発表者名: 寺田 健太郎

タイトル: 寺田のやってみたいこと ~宇宙物理と地球惑星科学の境界領域へのチャレンジ~

概  要:

 138億年前の宇宙開闢以降、恒星の進化を通じて重元素が蓄積し、金属量が約2%に達した46億年前に満を時して太陽系が誕生した。一般的な地球惑星科学は、太陽系誕生以降の森羅万象を研究対象とするが、「惑星の誕生と進化を、銀河化学進化の一部として捉える」という観点から、隕石の同位体比を眺めてみたい。

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2015年度

発表者名: 赤井 真道

タイトル: アルゼンチンNeuquén盆地白亜紀/第三紀(K/Pg)境界堆積岩中の炭素・硫黄含有量分布と大量絶滅事変の南半球生命圏への影響

概  要:

 約6500万年前の生物大量絶滅と地球環境変動は、世界各地で発見されている白亜紀/第三紀(K/Pg)境界粘土層中の古生物学・地球化学的記録に証拠づけられている。例えば、大量絶滅の原因として有力な巨大天体衝突説を支持するイリジウム濃集(e.g., Alvarez et al. 1980)はほぼ全てのK/Pg境界層に共通して見出されている。しかし一方で、全有機炭素量(TOC)等の分布が各境界層によって異なる点についてはあまり言及されていない。本研究では、当時の地球環境変動が生命に及ぼした影響の地域的差異とその要因を理解するため、北半球に比べ研究の少ない南半球のK/Pg境界層に着目した。具体的には、アルゼンチンNeuquén盆地K/Pg境界堆積岩に含まれる炭素・硫黄含有量の分布を明らかにし、他地域のK/Pg境界層におけるそれらの分布と比較 した。また、当時の生命活動の指標となる有機分子の深度分布を知るために、各堆積岩の可溶性有機成分をジクロロメタン/メタノール混合溶液で抽出し、GC-MSで測定した。

 セミナーでは、GC-MSで得られたデータとその考察について話す。

発表者名: 橋口 友美

タイトル:  Luna24レゴリスサンプルの年代分析に向けて

概  要:

 月の進化を議論する上でもととなる年代学的な情報は主に1969~1976年の米国のアポロ有人探査や旧ソ連のルナ無人探査によって持ち帰った試料によってもたらされた。月表土は長年の小天体の衝突により試料が破砕・細粒化されている。空間分解能の高い局所年代分析法の向上により、100ミクロンサイズ以下に破砕した試料中に微量に含まれる放射性元素の壊変の痕跡と鉱物学的な特徴の考察から、衝突破砕する以前に月面で起こったさまざまなイベントの議論が可能になってきた。本研究では、ルナ24号が危機の海(Mare Crisium)のレゴリス層の深さ130-132cmから回収したサンプルを観察し、最終的には様々なイベントの年代情報を得ることが目的である。

 今回はこれまで行ったサンプルの作成、SEM-EDSによる鉱物観察と化学組成分析の結果と、現在進行中である、レゴリス粒子一粒一粒の起源(高地または海)を明らかにするため、輝石中に含まれるTi濃度の分析状況について報告する。

発表者名: 蓮中 亮太

タイトル: 隕石有機物の投影型イメージング質量分析に向けたマトリックスの評価

概  要:

 約46億年前に太陽系が誕生する過程で形成された宇宙有機物は惑星間塵や隕石中有機物となって宇宙に存在する。またその有機物は現在までの化学進化の過程を記録していると考えられる。生命の誕生に関してアミノ酸などの生体関連分子が宇宙でどのように生成されたのかという大きな問題に対して隕石有機物の同定は非常に重要である。近年、隕石有機物に含まれる微小な有機物の官能基、同位体組成をほぼ非破壊でその場観測する技術・装置が実用化されてきてりる。しかし、微小領域における質量分析はあまり進んでいない。そこで広範囲を高分解能、比較的非破壊で質量分析できる投影型イメージング質量分析計の開発を行う。

 今回はレーザーイオン化の際使用するマトリックスの評価を行った。

発表者名: 長田 章良

タイトル: 鉱物石英の光励起発光(OSL)特性におけるイオン照射および熱的アニーリングの影響

概  要:

 光励起発光(OSL)年代測定では、自然放射線被曝によって捕獲中心に蓄積された正孔・電子の再結合による発光を観測している。OSLで観測され る蓄積線量情報は、太陽光への曝露によって簡単にリセットされるという特徴があるため、堆積物の年代測定に応用されている。OSL年代測定では、 光照射後OSL発光までの時間が短い成分(Fast成分)が卓越した試料が経験的に適しているとされている。しかし、同じ放射線被曝量でも試料に よって発光量に違いがあり、またFast成分の割合も試料によって異なっている。

 本研究では、石英の発光量・Fast成分の割合という試料に依存する特性と特定の不純物または格子欠陥との関連の解明を目的とし、6種類の履歴の 異なる石英砂に対してイオン照射により不純物元素を注入し、またその後の加熱によるOSL信号変化を測定した。

 イオン種はHe、O、Li、Euの4種類を用意し、高崎量子応用研究所および大阪大学理学研究科バンデグラフ加速器施設にて、加速電圧 400kV、1.8MV、3.0MVでそれぞれ照射を行った。ついで照射後それぞれの試料に500℃1時間の加熱操作を行った。

 イオン照射のみを行った試料では発光量に照射前と比べ変化は見られなかった。一方、500℃1時間の加熱を行った試料では、イオン種・照射エネル ギーに関わらずイオン照射量とともに発光量が最大で40倍に増加する傾向が見られ、Liを照射した試料で増加は顕著だった。また発光量全体に対す るFast成分の割合は、照射・加熱処理を施した後でも変化はなかったが、元々Fast成分の観測されなかった石英砂に対してイオン照射した試料 では、照射後加熱によってイオン照射量の増加に伴いFast成分の割合が最大7倍に増加する傾向が見られ、その後一定値に収束する傾向が見られ た。収束値は試料によって異なり、不純物元素の多く含まれる試料で最も高い値を示した。以上の結果から、イオン照射の電離・励起作用により形成さ れた電子・正孔捕獲中心の増加、そして不純物としてのLiの存在が発光量増加に寄与していると考えられる。また今回照射した元素以外の不純物元素 の存在がFast成分卓越に寄与していることが示唆された。

発表者名: 上岡 萌

タイトル:  2次イオン質量分析計を用いたChelyabinsk隕石の局所U-Pb絶対年代分析

概  要:

 2013年2月、ロシアのChelyabinsk州に隕石が落下した。回収された隕石試料はLL5普通コンドライトで (Galimov et.al 2013)、落下時の軌道計算より地球近傍小惑星(NEA:Near Earth Asteroid)が起源であると報告された(Zuluaga et.al 2013)。NEAの寿命は太陽系46億年の歴史よりも短く1億年程度のタイムスケールであることがわかっている(Gladman et.al 2000)。詳細な鉱物観察から、Chelyabinsk隕石中には衝撃により局所的に鉱物が溶融してできるショックメルトベインや超高圧高温条件下で生成するヒスイ輝石が発見されている(Ozawa et al. 2014)。これまでChelyabinsk隕石の年代分析では様々な研究機関や分析手法によって少なくとも8つに分類できる年代値が報告されているが(Righter et.al 2015)、ショックベインを形成した天体衝突と年代値の関係はよくわかっていなかった。

 本研究では、Chelyabinsk隕石母天体の熱進化および天体衝突の歴史解明に向けて、鉱物観察と2次イオン質量分析計を用いた局所U-Pb絶対年代分析を行った。その結果、隕石マトリックスからは44.29±0.13億年の形成年代、ショックメルトベインからは5.57±4.50億年の変性年代および43.53±1.20億年という形成年代値を得た。LLコンドライトの一般的な形成年代は約45.5億年であり、今回得られた約44億年という形成年代は有意に若い。このことからChelyabinsk隕石は母天体形成後、約44億年前にリン酸塩鉱物の放射壊変系が完全にリセットされる天体衝突を経験し、さらに約5億年前にショックメルトベインを生成する天体衝突を経験したと推測する。

発表者名: 高橋 絢子

タイトル: メイラード・タイプ反応生成物の自己組織化と原始細胞への化学進化

概  要:

 地球生命の起源に至る化学進化において、原始細胞は重要な役割を果たしたと考えられている (Deamer, et al. 2002)。先行研究でもコアセルベートやプロテノイドミクロスフィアなど微小球構造をした有機物の合成は報告されているが、それらの物質が生命機能を持ちえたのかどうかは明らかにされていない。そこで本研究は、初期地球上に普遍に存在したと考えられるホルムアルデヒドとアンモニアのメイラード・タイプ反応で形成する微小球状有機物のサイズ・形態・組成を調べることで、その形成機構と動態を解明することを目的とした。

 パラホルムアルデヒド(2M)、グリコールアルデヒド(1M)、アンモニア(0.5M)、水酸化カルシウム(0.2M)の水溶液(2 ml)を、90℃で3〜81日間加熱した。生成した黒色固体有機物を走査型電子顕微鏡と光学顕微鏡で観察した。また生成物の組成を全反射減衰赤外分光分析、顕微赤外分光、走査型透過X線顕微鏡を用いて分析した。

 微小球のサイズは加熱時間と共に増大し51日目に最大10〜20 μmに達したが、63日目以降は10 µm以下の球が再び増加した。またその形態は、微小球が結合・分裂する過程にあるダンベル型や、微小球内部に小さな微小球を包有する子持ち型など多様であった。黒色固体有機物は脂肪族炭素、芳香族炭素、水酸基、カルボニル基、イミノ基、アミノ基などの官能基を含み、その平均組成は加熱時間によらずほぼ一定であったが、局所的には官能基組成の異なる微小球も見られた。以上の結果から、微小球は様々な極性をもった高分子が両親媒性分子のように自己集合することで形成され、加熱と共に分子配列を変化させながら成長・分裂したことが明らかになった。このようなプロセスは、出発物質が持続的に供給されかつ濃縮しやすい温水環境であれば初期地球だけでなく地球外でも普遍に起こり、自己生産につながる細胞類似現象を営んだ可能性がある。

発表者名: 田坂 直也

タイトル: 月探査における水分子同位体その場観測装置の開発

概  要:

 近年リモートセンシング技術の発達などにより月極域には一定量の水が存在することが示唆されている。月面に存在する水の起源を知るには、同位体組成の情報が重要である。将来の月面着陸ミッションにおいてその場観測を行うため、私は水素、酸素の同位体組成分析が行える宇宙機搭載用の光学分析装置の開発を目指している。この装置では、空間に閉じ込めた水蒸気に単波長レーザーを照射し、分子による吸収測定することにより各同位体の存在度を測定する。レーザー光を何回も反射させることにより、吸収効率の向上を図る。レーザー装置、光学反射装置ともに光ファイバーのみで構成される新開発の部品の導入を計画している。このうち今回は、レーザー装置を用いて水分子による吸収スペクトルを観察した。

発表者名: 弘田 和將

タイトル: 弱磁性(非晶質)物質の磁気的異方性の検出

概  要:

 宇宙空間に存在する個体微粒子を星間ダストと呼び、この主成分は非晶質シリケートである。この星間ダストが宇宙磁場によって部分整列することで、恒星からの光が散乱・吸収されて数%程度の偏光が観測される。しかし、弱磁性物質である星間ダストがどのようなメカニズムで整列するのかは未だ解明されていない。

 その機構を説明するモデルとして、熱平衡条件下での磁気異方性エネルギーによる整列モデルに着目した。このモデルを検証するために、従来は等方的で存在しないと考えられてきた非晶質シリケートの磁気的異方性Δχを検出した。本研究では、先行研究と比べて鉄濃度の小さい人工非晶質シリカのΔχを測定することで、星間空間で鉄濃度の薄い領域でも上述のモデルが適用できる可能性を示した。またESR測定により、試料表面を基準とした原子レベルでの鉄の異方性を検出した。

発表者名: 松田 貴博

タイトル: 局所同位体分析に向けたレーザーポストイオン化SNMSの開発

概  要:

 太陽系の形成過程を解明するため、微小領域における同位体を分析する手法として二次イオン質量分析計(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometer)は広く使用されてきた。しかし、SIMSは二次イオン化効率が1%以下と非常に低く、試料のロスに対して感度が低いという問題が存在する。そのため、小惑星探査機「はやぶさ」が採取した試料や、太陽系形成以前の元素の同位体情報を保持しているプレソーラー粒子のような、大きさが1μm程度の極微小なサンプルを分析することが困難であった。このようなSIMSの問題を解決する手法として、現在、レーザーポストイオン化を用いた二次中性粒子質量分析計(SNMS:Sputtered Neutral Mass Spectrometer)の開発を行っている。本装置は、液体ガリウムの一次イオンビームによってスパッタされた中性粒子をフェムト秒レーザーでポストイオン化することによりイオン生成率を向上させることができる。装置の更なる高感度化を図るため、新たな検出システムを考案し、その検証実験を行った。今回のセミナーではその解析結果を発表する。

発表者名: 椎野 朱里

タイトル: 火星表層模擬鉱物試料のレーザー誘起蛍光分光分析

概  要:

 今日、NASAのマーズ・サイエンス・ラボラトリー計画によって火星表層からメタン、塩素化炭化水素などの数種の有機分子が検出されたり(Freissinet et al. 2015)、マーズ・ルコネッサンス搭載機器で得られた分光スペクトルの解析から現在も液体の水が存在する痕跡が示されたりなど(Ojha et al. 2015)、火星の生命存在可能性が高まる発見が加速的に増えている。他方、日本の将来火星探査では、火星表層から生体細胞を検出する目的で蛍光顕微鏡を搭載する計画が進められている。しかし蛍光顕微鏡では蛍光を発する物質しか観測できないために用途が限られる。もし、現状の装置にさらにレーザー誘起蛍光分光分析(Laser-Induced FluorescenceSpectroscopy, LIFS)を備え付ければ、生体物質だけでなく火星レゴリス上の岩石鉱物の識別をはじめ、存在するかもしれない微小な有機物の同定が可能になり、ミクロンスケールの詳細な惑星地質調査・ハビタビリティ調査が期待できる。本研究ではそのための基礎実験として、様々な鉱物試料のLIFSスペクトルを取得し、その特徴を理解することを目的とする。

 これまでの進捗状況としては、パルスYAGレーザー(355 nm, 7 mJ/pulse)、分光器、光増幅器、CCDカメラ、遅延パルス発生器でLIFS計測システムを構成し、火星表層に存在する粘土鉱物模擬試料として16種のLIFSスペクトルを取得した。その結果4種のケイ酸塩鉱物では400-700 nmにブロードな蛍光スペクトルが得られ、モンモリロナイトについでは照射後9 ns以降で蛍光が減衰した。また5種の水和塩では405 nmに鋭いピークを検出した。また3種のケイ酸塩鉱物の蛍光の強度変化も得ることができ、LIFSが火星表面の水の探査に有用である可能性を示した。

発表者名: 宮 晃平

タイトル: presolar SiCの同位体分析に向けた、Murchison KI sampleの評価

概  要:

 Murchison隕石などの始原的隕石の中には、ごく微量ながら、太陽系形成以前に存在していた天体の情報(ここでは同位体比)が保存されたgrainを含んでいる。これらをpresolar grainと呼び、構成元素などの同位体比によりそのgrainの起源となった母天体について推し量ることが出来る。しかしそれらは微量かつ微細であるが故に隕石中からの発見すら困難である。そこで、Murchison隕石の粉末に対し酸処理を行い、研究のmain targetとなるSiCの収集に向けたgrainの絞り込みを行った。現処理段階でsampleに残存しているのは、主にSiC, spinel, hibonite, chromite, corundumであると思われる。今回の発表では、SEM-EDSを用いて実際にsampleを観察した結果を報告する。

発表者名: 宮永 和範

タイトル: 圧力印加による岩石中の電流変化

概  要:

 1994-2015年におけるM8クラスの大きな地震8回すべてについて、地震発生40分ほど前から震源上空のGPSTEC(GPS電波の遅延を用いて計測される電離層総電子数)に異常が見られている (Heki, 2015)。この異常の原因として、地殻岩石の電気的分極が考えられ、圧電補償電荷説、岩石中の過酸化架橋の正孔励起、間隙水の移動による流動電位などのモデルが提唱されている。本研究では3×6×10cm の斑レイ岩、花コウ岩を用いて、圧力0-49 MPaにおける岩石の温度条件および含水率を変えて、流れる電流を測定する室内実験を行った。圧電物質を含まない斑レイ岩では、常温において高圧部から低圧部に向けて負の電流が圧力印加後2分程度流れたが、岩石温度を0℃未満に冷却した場合、常温の場合と異なる正の電流が長時間流れた。これは、斑レイ岩において常温の場合と冷却した場合では電気的分極の原因が異なる結果を示していると言える。

発表者名: 赤井 真道

タイトル: アルゼンチンNeuquén盆地K/Pg境界堆積岩中のC・S含有量分布と大量絶滅事変の南半球生命圏への影響

概  要:

 約6500万年前の生物大量絶滅と地球環境変動は、世界各地で発見されている白亜紀/第三紀(K/Pg)境界粘土層中の古生物学・地球化学的記録に証拠づけられている。例えば、大量絶滅の原因として有力な巨大天体衝突説を支持するイリジウム濃集(e.g., Alvarez et al. 1980)はほぼ全てのK/Pg境界層に共通して見出されている。しかし一方で、全有機炭素量(TOC)等の分布が各境界層によって異なる点についてはあまり言及されていない。本研究では、当時の地球環境変動が生命に及ぼした影響の地域的差異とその要因を理解するため、北半球に比べ研究の少ない南半球のK/Pg境界層に着目した。具体的には、アルゼンチンNeuquén盆地K/Pg境界堆積岩に含まれる炭素・硫黄含有量の分布を明らかにし、他地域のK/Pg境界層におけるそれらの分布と比較した。また、当時の生命活動の指標となる有機分子の深度分布を知るために、堆積岩の可溶性有機成分をジクロロメタン/メタノール混合溶液で抽出し、GC-MSで測定した。

 セミナーでは、これまでに得られた結果とその考察について話す。

発表者名: 蓮中 亮太

タイトル: 隕石有機物の有機無機相互作用と投影型イメージング質量分析計

発表者名: 田坂 直也

タイトル: 月極域における水の同位体分析

概  要:

 水は我々にとって欠かせない、また地球表層を特徴付ける重要な存在である。水の存在を一般化するために天体表面の水の供給、保持、散逸のメカニズムを知ることは非常に重要な事である。そして地球から最も近い月は、上述したことを理解するのに格好の天体である。これまで月の極域、特に永久影領域には水氷が保持されているとして数々のリモートセンシングに基づくレーダー観測が行われてきた。しかしその結果はユニークなものではなく、いまだに決定的な結論は出ていない。ユニークな結論を出すには、月面でのその場観測が必須となる。そこで、本研究では月探査宇宙機搭載に向けた水分子同位体分光分析装置の開発を進める。今回の発表では、装置の有力な候補として挙がっているファイバーレーザーを用いたCRDS法について報告する。

発表者名: 弘田 和將

タイトル: 弱磁性物質の磁気異方性の検出

概  要:

 星間空間を伝わってくる遠方の星からの光は偏光している。この観測事実を説明する定性的なモデルとして、星間ダストの磁場による整列(Davis & Greenstein, 1951)が提唱された。しかしダストの主成分は非晶質シリケートであり、常識的には磁気異方性が存在しないとされ、その整列機構は未だ解明されていない。

 本研究では、人工的に組成が制御された、先行研究よりもFe濃度の低いガラス試料を用いて、磁気異方性を測定した。この際、試料のサイズに制限のかかる従来のトルク法ではなく、微小重力下での落下実験によって成果を得た。今後の目標は、その結果と先行研究の結果を比較し、非晶質シリケートの反磁性異方性に言及することであるが、再現性を十分に得られていないため、今回の発表では現時点での進捗と今後の展望を述べることに留める。

発表者名: 松田 貴博

タイトル: ポストイオン化SNMSの開発

概  要:

 2010年6月14日に小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還し、小惑星イトカワのサンプルをリターンした。しかし、持ち帰られた試料は極微料であり、詳細に分析するには微小領域を高感度かつ高精度で分析できる装置が必要となる。

 これまで、微小領域の分析装置として二次イオン質量分析計(SIMS)が広く使用されてきた。しかし、SIMSでの二次イオン化効率は1%以下と非常に低く、スパッタされた粒子のうち99%以上が中性粒子であるという問題が存在した。その問題を解決する手法として、現在、スパッタされた中性粒子をレーザーによってポストイオン化する二次中性粒子質量分析計(SNMS)の開発を行っている。

 今回のセミナーではSNMSの装置についての説明を行い、今後の展望について発表する。

発表者名: 椎野 朱里

タイトル: 将来火星探査に向けた様々な鉱物のレーザー誘起蛍光分光特性の研究

概  要:

 今日、NASAのマーズ・サイエンス・ラボラトリー計画によって火星表層からメタン、塩素化炭化水素などの数種の有機分子が検出されたり(Freissinet et al. 2015)、マーズ・ルコネッサンス搭載機器で得られた分光スペクトルの解析から現在も液体の水が存在する痕跡が示されたりなど(Ojha et al. 2015)、火星の生命存在可能性が高まる発見が加速的に増えている。他方、日本の将来火星探査では、火星表層から生体細胞を検出する目的で蛍光顕微鏡を搭載する計画が進められている。しかし蛍光顕微鏡では蛍光を発する物質しか観測できないために用途が限られる。もし、現状の装置にさらにレーザー誘起蛍光分光分析(Laser-Induced Fluorescence Spectroscopy, LIFS)を備え付ければ、生体物質だけでなく火星レゴリス上の岩石鉱物の識別をはじめ、存在するかもしれない微小な有機物の同定が可能になり、ミクロンスケールの詳細な惑星地質調査・ハビタビリティ調査が期待できる。本研究ではそのための基礎実験として、様々な鉱物試料のLIFSスペクトルを取得し、その特徴を理解することを目的とする。

 これまでの進捗状況としては、パルスYAGレーザー(355 nm, 10 mJ/pulse)、分光器、光増幅器、CCDカメラ、遅延パルス発生器でLIFS計測システムを構成し、火星表層に存在する粘土鉱物模擬試料として用いたモンモリロナイトの蛍光スペクトル(波長360-700 nm)およびレーザー照射後の経過時間における(1-20 ns)蛍光強度変化を得ることができた。今後、さまざまな鉱物を測定し、蛍光スペクトルの特徴と蛍光寿命を比較していく。

発表者名: 宮 晃平

タイトル: 化学処理によるpresolar grainの単離

概  要:

 Murchison隕石などの始原的隕石には、太陽系形成時の高温環境下においても元素の同位体的均質化を免れたpresolar grainが微量ながらも存在する。これらを高質量・空間分解能分析装置を用いて分析することで、その粒子の起源となる天体を特定することが出来る。しかしこれらpresolar grainは、含有量が微量である上に、サイズも数umもしくはそれ以下であることがほとんどであり、隕石試料中から直接見つけ出すことは非常に困難である。そこでこの問題を解決したのが、化学処理である。過酸化水素H2O2や過塩素酸HClO4といった強力な酸化力を持った試薬などを段階を追って使用することで、かなりの精度で様々なpresolar grainを単離することが可能となった。今回の発表では、甘利氏がこれら手順についてまとめた論文を紹介しながら、自身の研究の初期段階であるサンプル作製の為の化学処理の結果を報告する。

発表者名: 宮永 和範

タイトル: 岩石を流れる電流はどこから

概  要:

 大きな地震前には様々な電磁気現象が起こることが報告されているが、その原因はまだ解明されていない。その中でもGPSTEC(GPSを用いた電離層総電子数変化)に異常があったと言う報告がある。この地震前の電離層総電子数(TEC)異常の解明のために、地殻岩石の電気的分極現象に着目する。地殻岩石の電気的分極に関する分極モデルとして正孔励起と流動電位がある。本研究では、これら正孔励起と流動電位に着目し、増加する圧力下での岩石中の電流変化を調べた。また、岩石を冷却し、温度変化による分極への影響を調べた。今回のセミナーでは、岩石の冷却実験により得られた結果とその考察について述べる。

発表者名: 蓮中 亮太

タイトル: 隕石有機物の有機無機相互作用と投影型イメージング質量分析計

概  要:

 隕石の中でも溶解や分化を経験していない始原的な隕石には最大で数wt%程度の有機物が含まれている事が知られており、その大部分は不溶性有機物(Insoluble Organic Matter)IOMである。これこれらの有機物は原子太陽系星雲や隕石母天体での化学的、熱的作用を受ける事で、H/C比や同位体比などの化学的な構造変化を経験している。よって、変性過程で受けた記録をを持っている隕石有機物を調べる事で、太陽系形成初期の進化過程を解明する上で重要な役割を持つと考えられる。研究テーマとして隕石中の有機物と鉱物の相互作用に着目し、その先行研究の紹介と投影型イメージング質量分析系を用いた測定の今後の目標について話す。

発表者名: 橋口 友美

タイトル: Luna24レゴリスサンプルの年代分析に向けて

概  要:

 月の進化を議論する上でもととなる年代学的な情報は主に1969~1976年の米国のアポロ有人探査や旧ソ連のルナ無人探査によって持ち帰った試料によってもたらされた。月表土は長年の小天体の衝突により試料が破砕・細粒化されている。空間分解能の高い局所年代分析法の向上により、岩石試料中に微量に含まれる放射性元素の壊変の痕跡と鉱物学的な特徴の考察から、月で起こったさまざまなイベントの因果関係を考慮した議論が可能になった。本研究では、ルナ24号が危機の海(Mare Crisium)のレゴリス層の深さ130-132cmから回収したサンプルを観察し、最終的には様々なイベントの年代情報を得ることが目的である。今回のセミナーではサンプルの処理法や、鉱物起源の同定のプロセスについてこれまでの結果について報告する。

発表者名: 長田 章良

タイトル: 石英の光励起発光特性と放射線欠陥の関連性

概  要:

 光励起発光(OSL)年代測定法では、自然放射線により励起される正孔・電子捕獲中心の再結合による発光を観測している。本研究では、石英のOSL特性と物理的メカニズムの関連を解明することを目的とし、3種類の自然石英に対して4種類の元素(He、O、Li、Eu)を、400keVイオン加速器を用いて注入し、発光量の変化を調べた。その結果、イオン種に関わらず、照射及び照射後に500℃以上の加熱を行うことにより、発光量が最大で約400倍に増加する結果が得られた。この結果は、照射の効果により形成された格子欠陥が発光に大きく関わっているであろうことを示している。

発表者名: 赤井 真道

タイトル: アルゼンチンNeuquén盆地K/Pg境界堆積岩中のC・S含有量分布と大量絶滅事変の南半球生命圏への影響

概  要:

 約6500万年前の生物大量絶滅と地球環境変動は、世界各地で発見されている白亜紀/第三紀(K/Pg)境界粘土層中の古生物学・地球化学的記録に証拠づけられている。例えば、大量絶滅の原因として有力な巨大天体衝突説を支持するイリジウム濃集(e.g., Alvarez et al. 1980)はほぼ全てのK/Pg境界層に共通して見出されている。しかし一方で、全有機炭素量(TOC)等の分布が各境界層によって異なる点についてはあまり言及されていない。本研究では、当時の地球環境変動が生命に及ぼした影響の地域的差異とその要因を理解するため、北半球に比べ研究の少ない南半球のK/Pg境界層に着目した。具体的には、アルゼンチンNeuquén盆地K/Pg境界堆積岩に含まれる炭素・硫黄含有量の分布を明らかにし、他地域のK/Pg境界層におけるそれらの分布と比較した。

 試料には、アルゼンチンNeuquén盆地のK/Pg境界層とその上下の層で採取された深度の異なる15種の堆積岩粉末(2-145mg)を用いた。3N塩酸を滴下して炭酸塩を除去した試料を有機炭素分析に用意した。各試料のTOC、全硫黄量(TS)を高知大学海洋コア総合研究センターのCHNS元素分析装置(Flash EA 1112)で測定した。

 TOCは白亜紀層(平均値0.37±0.08 wt%)から境界層(平均値0.16±0.05 wt%)にかけて約5分の2に減少し、境界層上部で最小値(0.09wt%)を示した後、第三紀層で再び回復した(平均値0.43±0.06 wt%)。生物大量絶滅を明瞭に反映するこのような分布傾向は、TOCが境界層で増えているスペイン・カラバカ地域や(Kaiho et al. 1999)、TOCが境界層と上下層で一定値を取る北海道川流布地域(Mita et al. 1996)とは対照的であった。この違いはおそらく、南半球では森林火災の影響が少なく煤の寄与が低かったためと考えられる。一方、TSは白亜紀層で検出限界以下であったが、境界層(0.3-5.0wt%)で増加しその上部で最大値(5.00wt%)を示した後、第三紀層(0-0.28wt%)にかけて再び減少した。このような硫黄の濃集は北海道川流布(Kajiwara and Kaiho,1992)やアメリカ・ドギークリーク(Maruoka et al. 2002)でも報告されており、硫酸還元菌の活動による硫化物生成とそのきっかけとして考えられている酸性雨が北・南半球に渡り地球規模であった可能性を支持する。

発表者名: Dr. Mahesh Anand(英国・オープン大学)

タイトル: 月の水と揮発性物質の歴史の再構築

      Reconstructing the history of water and other volatiles in the Moon

概  要:

Recent sample studies have demonstrated that the lunar interior contains appreciable quantities of water although estimates for the bulk-water content of the Moon vary considerably. The origin and evolution of this lunar water remain unresolved with a range of possibilities including retention of primordial water during lunar accretion to a later addition of water following the crystallisation of the putative Lunar Magma Ocean. In addition to water, recent lunar sample investigations focussing on other volatiles (e.g., C, N, Cl), combined with results obtained from recent missions, have brought about a paradigm shift in our understanding of the history of lunar volatiles with potential implications for the origin of water and life on Earth and future utilisation of resources in-situ on the Moon. Lunar apatite has been the main target for recent sample studies because of its widespread occurrence in lunar rocks and its potential to reveal the volatile inventory of the Moon. We have measured abundances of OH, Cl and F and the isotopic composition of H and Cl in apatites from samples representing the ancient highlands, the younger maria, and impact-related rock types. Some major highlights from recent work carried out on lunar apatites have been the possibility of a common source of water in the Earth-Moon system. The dominant source for lunar water appears to be carbonaceous chondrite-type material with a minor contribution from cometary objects. In contrast, the postulated water-ice at the lunar poles could have been derived from completely different source(s) including asteroidal, cometary and solar wind, potentially spanning a significant (but as yet unconstrained) geological time period. Reconstructing this history will require further research on existing lunar samples, but also ‘new’ samples from regions of the Moon not sampled previously.

発表者名: 高橋 絢子

タイトル: メイラード・タイプ反応で生成する微小球状有機物の サイズ・形態・組成分布

概  要:

 生命起源に至る初期地球上の化学進化において、分子が形成した微小球が原始細胞の役割を果たしたと考えられている(Weber, 2005)。過去にもプロテノイドミクロスフィア(Harada and Fox, 1958)やコアセルベート(Oparin et al., 1976)など微小球状有機物の形成実験は報告されているが、微小球の形成過程や安定性について調べた報告はほとんどない。本研究では、初期地球に遍在したと考えられるホルムアルデヒドとアンモニアのメイラード・タイプ反応の過程で形成しうる微小球状有機物が持つ原始細胞としての可能性を探るため、そのサイズ・形態・組成と反応条件との関係性を調べた。

 パラホルムアルデヒド(2M)、グリコールアルデヒド(1M)、アンモニア(0.5M)、水酸化カルシウム(0.2M)の水溶液(2 ml)を、90℃で3〜90日間加熱した(Cody et al.,2009)。加熱後の溶液を遠心分離し、生成した黒色固体有機物を走査型電子顕微鏡(SEM)と光学顕微鏡で観察した。また全反射減衰赤外分光分析(ATR-IR)測定を行い、生成物の官能基組成を分析した。

 加熱実験で得られた黒色固体有機物の量は時間と共に増加し、最大収率は13.7%であった。微小球サイズは加熱時間と共に増大し、10日目では5~10μm、50日目で最大サイズ10〜20μmに達したが、63日目には5〜10μm以下のものが多く生成した。またその形態は、微小球同士が結合したタイプ、内部に小胞を持つタイプといった多様性を持つことが分かった。ATR-IR測定の結果、黒色固体有機物の組成は加熱時間によらずほぼ一定で、アルキル炭素と芳香族炭素(π共役系)の両方を有した。以上の結果より、この微小球は両親媒性分子の自己組織化により形成され、成長・分裂といった原始細胞のような挙動を示すことが明らかとなった。

発表者名: 上岡 萌

タイトル: 2次イオン質量分析計を用いたChelyabinsk隕石の局所U-Pb絶対年代分析

概  要:

 2013年にロシアへ落下したChelyabinsk隕石は、LL5普通コンドライトに分類され(Galimov 2013)、地球近傍小惑星(NEA)の軌道を周回していたことが判明している(Zuluaga 2013)。NEAの寿命は大部分が数億年といわれているため、小惑星帯や他の軌道から天体衝突によって軌道変遷してきた可能性が挙げられる。さらに隕石試料中にショックベインや高圧高温生成鉱物が発見され、ショックベイン中は1700-2000℃、3-12GPaの高温高圧状態が実現したと見積もられた(Ozawa 2014)。この条件下ではU-Pb放射壊変系は影響を受けたと期待できる。そこで、Chelyabinsk隕石の母岩の形成年代とショックベイン形成に関わった大規模な天体衝突イベントの年代を得ることを研究目的とし、ショックベイン中・外(母岩)に対して2次イオン質量分析計で局所U-Pb系絶対年代分析を行った。セミナーでは得た形成年代、ショック年代とその考察について発表する。

発表者名: 宮永 和範

発表内容: 論文紹介

タイトル: Mw dependence of the preseismic ionospheric electron enhancements ( Heki, K. and Enomoto, Y., J. Geophys. Res. Space Phys., preprint )
超高層大気は巨大地震の発生を知っていたか? ( 日置 幸介, 岩波書店「科学」2011年10月号 ( vol.81, No.10 ), 1063-1064)

概  要:

 大きな地震の前には電磁波の伝搬異常やULF-VHF帯の電磁場の発生などのさまざまな電磁気異常現象が起こることがしばしば報告されいるが、その原因はまだ解明されていない。

 Hekiは、2011年の東北地方太平洋沖地震に際して、その直前にGPSTEC(GPS電波を用いた電離層総電子数変化)に異常があったことを報告した。本論文では、その後の各方面からの批判に対する、再反論が述べられており、事象に対する信頼性がさらにあがったことが示されている。

 ちなみにGPSTECでは、電離層の電子密度の変化による電磁場伝搬遅延を用いて、到来方向の電子密度の時間的変化を議論することが出来る。

 今回のセミナーでは、地震前の電離層電子数(TEC)異常に関するこの論文紹介とその現象の解明のために、卒業研究で行う予定の地殻岩石の電気的分極現象について述べる。

発表者名: 田坂 直也

発表内容: 論文紹介

タイトル: The origins and concentrations of water,carbon,nitrogen and noble gases on Earth ( Bernard Marty, Earth and Planetary Science Letters, 313-314, 56-66, (2012) )

概  要:

 天体によって、水素や窒素の同位体組成が違うことが分かっており、各天体の起源によって、また各同位体の質量依存によって同位体比は異なる値をもつ。

 今回の発表では各天体の水素、窒素の同位体比から分かったことを紹介する。それに加えて、水素、窒素の同位体比では区別しきれないことまではっきり区別できるようになる酸素の同位体比についても触れる。

発表者名: 松田 貴博

発表内容: 論文紹介

タイトル: New instrument for microbeam analysis incorporating submicron imaging and resonance ionization mass spectrometry ( Z. Ma, et al., Rev. Sci. Instrum., 66, 3168 (1995) )

概  要:

 これまで二次イオン質量分析法(SIMS)による局所分析が行われてきたが、イオン化効率が低いのが問題点であった。その問題点を改善するために二次中性粒子質量分析法(SNMS)が開発されてきた。発表する論文ではサンプル表面をアブレーション用レーザーでアブレーションし、飛び出た中性粒子をポストイオン化レーザーで共鳴イオン化することにより特定の元素を高いイオン化効率でイオン化している。隕石から分離したSiC粒子にある微量濃度のTiを開発した装置で測定することにより、地球上のTiの同位体比では見られないTiの同位体比異常が観測された。

 卒論では非共鳴化ポストイオン化SNMSを開発していくことを研究テーマとする。今回の論文と関連付けて発表する。

発表者名: 弘田 和將

発表内容: 論文紹介

タイトル: High Field Magnetism of the Haldane-Gap Materials and Biological System ( Takeuchi Tetsuya, Osaka University Knowledge Archive (August 1992) )

概  要:

 星間空間を伝わってくる遠方の星からの光は偏光している。この観測事実は、磁場に垂直な光の電場ベクトルの成分が、平行な成分よりも多く吸収されていることを示している。その現象を説明する定性的なモデルとして、回転楕円体粒子の磁場による整列(Davis & Greenstein, 1951)が提唱されている。

 今回の発表では、粒子の磁場整列の身近な例として、赤血球(RBC)が磁場に対し整列するメカニズムを解明した論文を紹介する。健康な人のRBCは、その内部に含まれるヘモグロビンが持つFeイオンのスピン状態に関わらず、定常磁場下でその円盤面が磁場に平行に配向することが観測された。解析の結果、配向はRBCの脂質二重膜の反磁性異方性に依るものだということが解った。

発表者名: 椎野 朱理

発表内容: 論文紹介

タイトル: Mars methane detection and variability at Gale crater ( C. R. Webster, Science, 347, 415 (2015) )

概  要:

 今回のセミナーでは火星メタンの研究について紹介し、自身の卒業研究への関連と今後行うことについて述べる。

 探査機Curiosityによる火星探査で、Gale craterでの火星大気を試料分析波長可変レーザーを用いて行われた測定、分析の結果火星の大気中のメタンの平均値が0.69±0.25ppbvの値が発表された。この量は惑星間塵や炭素室コンドライトに付着した有機物が紫外線によって変質したという理論モデルの値より低く、さらに一時的に7.2±2.1ppbvの値のメタンの値の上昇が確認され、火星には未知のメタン源があると考えられる。

発表者名: 宮 晃平

発表内容: 論文紹介

タイトル: Presolar History Recorded in Extraterrestrial Materials ( Ann N. Nguyen and Scott Messenger, ELEMENTS, (FEBRUARY 2011) )

概  要:

 現在私たちの太陽系銀河を構成するほとんど全ての元素は、太陽系の形成以前から存在した"presolar"なものである。しかしこれらは太陽系形成時に一度リセットされ、太陽系固有の同位体比をもつ元素集団として再構成された。一方、太陽系形成以前にgrainまで成長したものの中で、太陽の高エネルギー活動の影響をほとんど受けずに現在まで生き残った非常に小さな"presolar grain"が隕石中などから見つかっており、太陽系形成以前の銀河の情報が少なからず隠されていると思われる。

 本文では、検出された様々な種類のpresolar grainの分析と太陽系外の天体で行われる元素合成過程との照らし合わせから、presolar grainの起源や天体内での核融合過程を考察する。

発表者名: 青木 順 氏 (阪大理 物理・助教)

タイトル: イメージング質量分析装置によるマーチソン隕石含有物の分布測定

概  要:

 地球に存在する生命の起源に関して、これまで様々な議論がなされてきている。近年、可能性が高いとされているのは、宇宙空間において生成した有機物が太陽系形成の初期段階において地球にもたらされ、その有機物をもとにして生命へと至ったとする説である。 このような太陽系の初期段階に関する始原的な情報は現在も特定の小惑星や惑星間塵(宇宙塵)などに残っており、それらを調べることでどのような有機物がかつて地球にもたらされたのかを知ることができる。

 このような研究では、始原的小惑星に由来して地球に飛来した炭素質コンドライト隕石を主な測定対象としている。有機物を多く含有するマーチソン隕石は、これまでによく研究されている。含有されている有機物は、アミノ酸、炭化水素、カルボン酸など多岐にわたり、クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた手法により、多くの物質が同定されてきた。このように隕石中の有機物を分析する場合には、全体を溶媒で抽出する大域的な測定がもっぱら行われてきた。しかし、より局所的な観点から、隕石中の有機物の分布構造や隣接する鉱物との因果関係を知ることができれば有機物の生成過程についての重要な情報を得ることができる。これまで、隕石中の有機物の空間分布はラマン分光や放射光などを用いた測定による化学結合に着目したものがあったが、この手法では詳細な分子組成はわからない。質量分析により分子の質量を高精度で測定できれば分子組成などより多くの情報を得ることができる。表面分析の手法では、イオンビーム照射によるイオン化を用いた質量分析イメージングがあるが、イオン化時にフラグメント化が起こるため有機物の分析には適していなかった。大阪大学で開発したMALDIイメージング質量分析装置は高分子のイオン化が可能で、高質量分解能かつ高空間分解能での有機物の分布情報を測定することができる。レーザーによるソフトなイオン化であるため、有機物分子を壊すことなくイオン化できる。さらに、これまでの走査型では空間分解能は10-100μm程度が限界であったが、投影型では1μmの空間分解能を実現している [1]。この装置を用いてマーチソン隕石における構成成分の分布を測定した。

 

参考文献
[1] J. Aoki, M. Toyoda, J. Mass Spectrom. Soc. Jpn., 61 (3) 23-33 (2013).

発表者名: 久好 圭治, 永田 英 氏, 神野 佑介 氏 (大阪府立春日丘高等学校 定時制 科学部)

タイトル: 反磁性磁化率をはかる〜磁場勾配力と重力を直行させた永久磁石による測定法〜

概  要:

講演の様子

講演の様子

 強磁性物質が磁石に引き寄せられる現象はよく知られているが,我々は反磁性や常磁性の性質に興味を持ち,強磁性と反磁性を視覚的に理解してもらう装置を製作した.それからヒントを得て,試料にかかる磁場勾配力を重力と直交させることにより,永久磁石レベルの弱い磁場中で反磁性物質の磁化率を測定できる安価で精度の高い測定装置を製作した.さらに常磁性磁化率を測定できるように改良を加えた.

 糸に吊した試料に永久磁石で作った磁気回路で磁場勾配力を作用させた.このとき試料にかかる重力,糸の張力,磁場勾配力を釣り合わせることで,試料の反磁性および常磁性磁化率を求めた.この測定原理は,試料の質量を測定する必要がなく,微小な粒子の磁化率を測定することができる.

 磁気回路に工夫をこらし磁場勾配に極大値をつくることで,磁場勾配力が最大になる点を一意的に決定した.そのため,反磁性磁化率の測定は2桁にわたる範囲で3桁の精度の測定が可能となった.また,常磁性磁化率測定では,釣り合いの位置での磁場測定の精度により反磁性磁化率の測定ほどの精度は出なかった.しかし,磁気回路をより強力にまたより緩やかな磁場勾配にすることにより,精度の向上を図れると考えられる.

 吊り下げる糸や空気の流れ,静電気の影響などを考慮することで,さらに測定精度を上げられる.質量に依存しないこの測定法の特徴を利用し,微小な単一粒子の磁化測定の限界に挑戦してみたい.

講演者名: Dr. Nicholas P. Lockyer ( School of Chemistry, The University of Manchester )

タイトル: Developing Techniques for Chemical Imaging using Ion Beams, Lasers and Mass Spectrometry

概  要:

講演の様子

講演の様子

Over the last few decades Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry (ToF-SIMS) has developed into a power method for surface chemical analysis. The technique is capable of measuring the chemical distribution and composition of complex materials with a sensitivity and specificity which is provided by mass spectrometry. More recently ToF-SIMS has found application in biology and clinical sciences, where it complements other mass spectrometry imaging methods such as Matrix-Assisted Laser Desorption Ionisation (MALDI) and Desorption Electrospray Ionisation (DESI). This presentation will outline some of the key advances in the ToF-SIMS technology and methodology using examples from our own laboratory, including the application of massive gas cluster ion beams and laser post-ionisation sputtered neutral mass spectrometry. Remaining challenges will also be discussed.

発表者名: 橋口 友美

発表内容: 論文紹介

タイトル: Clarification of Sources of Material Returned by Luna 24 Spacecraft Based on Analysis of New Images of the Landing Site Taken by Lunar Reconnaissance Orbiter ( A. T. Basilevsky, et al., Geochemistry International, 51, (2013) )

概  要:

 月周回衛星「かぐや」をはじめとする各国の月探査計画の成功によって、月面の年代学研究は大いに進展し、月の地質史を復元するだけでなく、様々な事象の因果関係の理解にも重要な役割を果たしている。 本論文では、NASAが打ち上げた月探査機ルナー・リコネッサンスオービターの超高解像度カメラによって成功したルナ24号の着陸地点のリモートセンシ ングと、ルナ24号が持ち帰ったTi濃度の低い「危難の海」の深さ2mのコアサンプル試料の分析から、そのクレーターの地質構造について考察する。

 また、アポロ・ルナ計画の月探査から分かってきた「月の玄武岩のTi濃度と火成活動の相関」について話す。

発表者名: 蓮中 亮太

発表内容: 論文紹介

タイトル: Heterogeneous distribution of water in the moon ( Katharine L. Robinson & G. Jeffrey Taylor, Nature Geoscience, 7, (2014) )

概  要:

 アポロ計画で月から持ち帰られたサンプルの測定結果は、月は完全に無水であるという結論を導くものだった。しかし近年の分析技術の発達やリモートセンシングによる観測により月面には水が存在しているという結果を示す研究が出てきている。本論文では様々な研究から得られた月面での含水率や水素同位体比の偏りを示す結果とそれがどのようにして生じたのかについて可能性を考察する。

 また修士研究のテーマとして月サンプル中のN、Hの同位体比と年代測定の同時取得を目指す研究手法について話す。

発表者名: 赤井 真道

発表内容: 論文紹介

タイトル: Ocean acidification and the Permo-Triassic mass extinction (Science, 348, (2015) )

概  要:

 約2億5200万年前に起こったペルム紀/三畳紀(P/T)境界生物大量絶滅は、シベリア・トラップ火山活動が引き起こした海洋酸性化に起因した可能性がある。しかし、酸性化イベントの直接的証拠に欠け、その規模については議論が続いている。そこでClarksonたちは当時の海洋PHを記録する、ホウ素同位体の測定を行った。

 すると、当時の火山活動によって放出される炭素が引き起こす酸性化は、海洋による緩衝で抑えられていたが、シベリア・トラップの火山活動増加に伴って緩衝能を失ったことが分かった。その結果、普遍的に海洋PHが降下し、固着性石灰化生物の選択的な絶滅を引き起こした。

 現在、私は約6550万年前に起きた白亜紀/古第三紀(K/Pg)境界大量絶滅における酸性雨の影響について研究しており、海洋酸性化及びそれによる絶滅メカニズムのプロセスに関する幅広い知見が重要である。今回の発表では、M.O.Clarkson et al. (2015)の論文を紹介し、K/Pg境界酸性雨仮説についての考察との関連を述べる。

発表者名: 薮田 ひかる

タイトル: 「はやぶさ」のサンプルキャッチャーから回収された未知の炭素微粒子の起源同定

概  要:

 JAXA惑星物質試料受入(キュレーション)設備にて、「はやぶさ」のサンプルキャッチャーから58種の未知の炭素微粒子が検出され、イトカワ微粒子(カテゴリ1、2)と区別するために"カテゴリ3"と分類された。カテゴリ3ははたして地球外起源なのか、地球起源の汚染物質なのかを明らかにするために、国内の大学研究機関の有機物分析研究者と宇宙研キュレーションとの協力研究で、SEM-EDS, nanoSIMS, 顕微赤外、顕微ラマン、STXM, ToF-SIMS, TEM等を用い、種々の有機物分析と同位体分析を行った。その結果、未知微粒子は隕石有機物とは異なり、窒素(とくにアミド基)に富み、チタンやカルシウム、塩化物が含まれ、同位体異常はなかった。加えて、一部のカテゴリ3は、サンプラーを組み立てたはやぶさ2クリーンルームのコンタミクーポンで採取した微粒子と組成が非常に似ていたため、地球起源である可能性が濃厚となった。具体的な起源としては、ポリイミドのような探査機に使用されているポリマー材料、あるいは、サンプラーを組み立てたクリーンルーム中に残存する微量の生体有機物などが汚染候補物質として考えられた。

 こういった汚染微粒子は、はやぶさとほぼ同じ工程で臨んだ「はやぶさ2」においても問題で、試料が帰還した際にいかに小惑星物質と区別できるかが解決策となる。今後、探査機材料の劣化実験等を行い、汚染物質の決定を目指す。

(Yabuta et al. (2014) Earth, Planets, Space 66:156)

発表者名: 高橋 絢子

発表内容: 論文紹介

タイトル: Synthesizing life ( Jack W. Szostak, et al., Nature, 409, (2001) )

概  要:

 今回のセミナーでは原始細胞についての研究を紹介し、自身の研究への応用と今後の方針について述べる。

 生命とは自己複製する機能を持った①遺伝情報と②それを閉じ込める容器の融合体であると定義できる。初期地球において遺伝情報の伝達はすべてRNAが担っていたと考えられている(RNAワールド仮説)ため、①についてはまず遺伝情報の貯蔵、伝達、鋳型、酵素としての機能をすべてもつRNAレプリカーゼを合成する必要がある。②については、分子の自己集合による膜で構成されたベシクルが挙げられる。ベシクルは高分子を閉じ込めたまま成長、融合、分裂などの振る舞いをすることで内容物の変化や伝播を補助する役割をもつ。ベシクル中に取り込まれたRNAレプリカーゼはベシクル膜を安定化させる作用をもつため、ベシクルの成長や分裂に影響する。その後、それらの融合体は環境に応じてより優位なものが選択(ダーウィン進化論)され、徐々に現在の細胞へ変化したと考えられる。

発表者名: 上岡 萌

発表内容: 論文紹介

タイトル: Growth and Evolution of Asteroids ( E. Asphaug, Annual Review of Earth and Planetary Sciences, 37, (2009) )

概  要:

 2013年にロシア、チェリヤビンスク州に落下した隕石のタイプは普通コンドライトでLL5と報告されている。(E.M Galimov et.al 2013) 隕石試料中には天体衝突に伴う超高圧・高温条件の下で生成したヒスイ輝石が発見されており(Ozawa 2014)軌道計算によりNEA(地球近傍小惑星)と判明していることから(Jorge I. Zuluaga et.al 2013)小惑星帯を起源とする母天体が衝突などにより軌道が変化しNEAとなった可能性が示唆される。

 現在私はNEA進化の解明にむけて2次イオン質量分析計を用いたChelyabinsk隕石のU-Pb系年代分析により年代値による考察を試みており、一般的な小惑星の軌道変遷についての知見が重要となる。そこで今回のセミナーではAsphaug(2009)の論文を紹介し、Chelyabinsk隕石母天体の軌道進化の考察への関連性を述べる。 今回のセミナーでは原始細胞についての研究を紹介し、自身の研究への応用と今後の方針について述べる。

発表者名: 長田 章良

タイトル: 石英のOSL (Optical Stimulated Luminescence) 特性解明に向けた研究

概  要:

 OSL年代測定法は、石英や長石が蓄積する自然放射線被曝量の情報を用いた年代測定法である。自然放射線により、鉱物の価電子帯の電子や正孔が励起され、不純物センターや酸素欠陥などに捕らえられ、準安定状態を形成する。ルミネッセンス法では、光や熱によって準安定状態の電子を伝導帯に励起し、正孔と再結合した際の発光を計測する。OSL法では、太陽光によって簡単に励起される発光を観測するため、土砂が堆積した時点からの年代を知ることができる。また普遍的に存在する石英や長石を用いるため、放射性炭素年代測定などが主である第四紀研究での年代測定手法として有用であり、例として、津波堆積物の研究(A. L. Prendergast et al., 2012)や砂丘の形成史の研究(T. Tamura et al., 2011)に応用されている。しかし、試料によって同じ被曝線量に対しても発光量の違いがある。また励起光に対する感度も試料によって異なり、感度の高い成分(Fast成分)が卓越した試料が年代測定に適しており、火成岩質の岩石に由来する石英ではよりFast成分が見られにくいという報告がある(K. Tokuyasu et al., 2010)。本研究では、これらの石英のOSL特性と物理的機構の関連を解明することを目的としている。

 今回の発表では、OSLに関する研究全体の概要と、さらに本研究の位置付けを明確にするため、論文 (R. M. Bailey, 2001)を紹介し、本研究との関連を述べる。

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