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将来の惑星探査における分析の可能性

火星衛星探査計画(MMX)における質量分析装置

MMx

表面を宇宙空間に剥き出しにする小型天体にとって、表面物質を外に放出することは共通の現象です。月及び水星、多くのアステロイドは大気を持ちませんが周辺には天体起源の非常に希薄なガスがあります。
小型天体の物質放出の原因の一つに太陽風によるスパッタリングがあります。超音速で天体表面に衝突する太陽風イオンと運動量を交換して、表面物質が叩き出されます。これは実験室でのSecondary Ion Mass Spectrometry (SIMS)と非常によく似ています。SIMS分析では一次イオンを試料に照射して放出される試料起源の二次イオンの質量分析を行い、試料の組成比などを調べます。
小型天体に対してSIMS分析のようなことが周回探査機搭載の質量分析器を使ってできないかという取り組みが以前からあります。太陽風相当のイオンビームを天体表面模擬試料に照射する実験から、その可能性が提唱されてきました。2000年代になって月周回探査機KAGUYAにより二次イオン放出現象は観測され、実現性は確かになってきました。 周回探査機による観測の利点として、探査の簡便性があります。サンプルを取ってくることが最も精度の高い分析ができますが、そのような着陸探査は費用や期間が掛かります。今後より多くの小型天体の観測を素早く行いたいとなった場合、安くて短期間で準備できる周回探査機のほうが便利になってきます。
火星衛星探査計画(MMX)ではサンプル持ち帰りも行いますが、質量分析器も搭載していて、周回軌道上で火星衛星に対して太陽風を利用したSIMS分析も実施します。周回軌道からの観測である程度の分析ができれば、数多の小型天体に対して安くて速い分析ツールを手にしたことになります。この研究室ではMMXに搭載する質量分析器の開発を行っています。

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月面微量水同位体測定のための吸収分光装置CRDSの開発

MULTUM-SNMSの外観

現在、月極域の水探査を行う機運はかなり高まっており、JAXAの国際宇宙探査の枠組みにおいて、月極域にローバーを降ろし月面水を直接分析する計画が進められている。

その分析装置の一つとして吸収分光計CRDS(Cavity Ring-Down Spectrometer)が予定されており、その基礎研究に携わっている。 CRDSの特徴は、多重反射によるレーザー光共振を用いた高感度性能にあり、月面の限られた水を水蒸気としてその近赤外吸収スペクトルを測定し、水素同位体比を調べることでその水がどういった供給源をもつかを同定するということを目標としている。

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